何だろう、 何でサトシにこんなにときめくのかな。最近とてつもなくかっこよく見えるの。でもそれより可愛く見えるってどうなのあたし。女のあたしより可愛く。まああたしは可愛くもないんだけどさ。‥自分で言って悲しくなってきた。虚しすぎる。っていやいや、あたしのことは置いといて、サトシよサトシ。何であんなに可愛いの、たまにかっこいいの。今まではそんなこと思わなかったのに。え、酷いって?しょうがないじゃない、今までは只の幼なじみとしか見てなかったんだもの。まったくどうしたんだろう、あたし。一種の病気じゃね? 「っていうことで何とかして、っていうかしろ」 「知るか」 「冷たいー」 「あんな温い奴のことなんか俺に聞くな」 まあそうだわな、そう心の中で呟いて持っていたジュースをズルズルと啜った。 相変わらずのしかめっ面のシンジはこれ以上無いくらい、うぜぇって顔してやがる。 ちょっとは真面目に聞けよ。 こんな乙女が悩んでるっていうのに! そうふざけて言えば、 お前が乙女なら世界中乙女ばっかになるなとか言いやがった。 ちょっと待て、てめぇ、それどういう意味だよコラ。(ちょっと本気だったんだけどっ!) 恋に悩む女の子はどんな子でも乙女なんだよ、ツンジのバーカ。 「‥て、ん?恋?」 「誰がツンジだ。俺はシンジだ、アホ」 「あー、はいはい」 「……(‥うぜぇ)」 視界の端でシンジがとてつもない顔して睨んでるのが見えたけど無視。 あたしは自分が思ったことについて考えた。 恋っていった?えええ、嘘だ嘘だ。 あたしがサトシの事を好き、だなんて。 確かに無邪気にはしゃぐサトシを見るとあたしまで嬉しくなる。 あたしに抱きついてきたりすると死ぬほどドキドキして呼吸もできなく‥ってこれは抱き締められているからか。 とにかく心当たりはあっちゃうわけで。 「どうしよ、シンジ!」 「うるさい、何だ」 「あたし、サトシのことが」 「呼んだか?」 ぎやああああ! 吃驚のあまり、叫びながら立つ。 同時にガタンと倒れる椅子。 振り返れば、驚いた様子のサトシが立っていた。 どうしようどうしようとシンジの隣に走って肩をバシバシと叩く。 「‥ナマエ!」 「はいっ!?」 「もう出発するから行くぞ!」 「うあ!ちょ、サトシ!あ、シンジごめん、ありがとう!」 「早く行くぞ!」 手をぐいぐいと引かれ、半ば引きずられるようについて行けば、サトシは急に立ち止まる。 ぶふっと鼻がサトシの背中にぶつかる。地味に痛ぇ! 鼻をさすりながらどうしたのと問えば、くるりとサトシが振り向く。 目をパチパチとさせるとサトシはあたしにチョップをかます。 がぁんと脳内にも衝撃がきてくらくらと目が回った。 思い切りやりおった‥! 「痛ってぇー!何すんの!」 「ナマエが悪いんだからな!!」 「意味わかんねー!」 「もうシンジと話しちゃダメだ!」 「ますます意味わかんねー!!」 「だぁーかぁーらぁー!」 焦れったくなったのか、その場でうがーと叫ぶサトシ。 あたしも叫びたいんですけどー! で、結局あんたは何が言いたいの。 ふう、とため息をついてそう言ってやればサトシは気まずそうに顔を横に逸らした。 「サトシ?」 「オレはナマエが好きなんだっ!」 「う、ん(ドキドキ)」 「だから、シンジと二人きりで話すな!」 「‥嫉妬?」 「な、あ、ええっ!?」 一つの単語を聞いた瞬間、サトシは顔真っ赤にさせて挙動不審になる。 わたわたと慌てる姿も可愛い…て、結構重傷だなコレ。 サトシのこの行動は図星なんだと都合のいい解釈をして、ニヤリと笑みを浮かべた。 「嫉妬かー(ニヤニヤ)」 「いやっ!これは、そのー…!」 「ありがとうね、サトシ」 「え?」 結局両想い (何で"ありがとう"なんだ?)(うふー!まだ秘密っ!(あたしが素直になれるまで待ってて)) 090723 |