何してんの。 そう言った言葉は潮風に吹かれてふわふわふわ。 デンジの耳に届いた瞬間、ヤツはそれはそれは焦った顔を見せた。 「えっ、あの、これはだな…!」 「あの…、」 「……」 「ナマエ!!」 その場を走って離れた。 わたしが見た光景は、デンジと可愛らしい女の人が楽しそうに話していたのだ。 見たくなかった…一瞬でもお似合いだなんて思った自分を呪った。 ジムの隣を通った際ガブリアスのストーンエッジで壊したくなったが流石に止めておいた、視界の端にデンジが見えたからである。 走らなきゃ。 残念ながら今煙幕を使えるポケモンが手持ちにいないため目眩ましもできない、つまりはわたしは走り続けるしかないのだ。 「う、わっ!?」 海辺に着いた時である。 砂に足をとられ、盛大に転んでしまった、痛、い。 上半身を起こして鈍い痛みが走る足を見た…血が出ている。 砂の中に貝殻が埋まっていたらしい、見事に切れていた。 じわりと目に涙が膜を張る。 痛い、痛いよ。 「う…」 ぽろぽろぽろ、涙が溢れて止まらない。 足が痛いからではない、まあ痛いけれども。 心が痛い。 脳裏にあのシーンが蘇る。 デンジ…、 「ナマエ大丈夫かっ!!?」 「!」 「デン、ジ…?」 「切れてるじゃないか!」 「い…嫌だ、触らないで!!」 誰もいない海辺に手を叩く音が響く。 やってしまったと思った半面ざまあみろとも思ってしまった、最悪な人間であるわたしは。 「…お前なあ、何勘違いしてるのか知らないがあの子とは違うぞ」 「…何が」 「あの子もジムリーダーなんだよ、だから色々話してたんだ」 「………」 「信じられないか?」 信じたいけど信じられない。 口にはせず黙っているとデンジがはあとため息をついた。 ビクリと身体が震えた、怖い。 どくどくどく、心臓も傷口も脈打つ。 「馬鹿だな、お前は」 「…だって、!」 不安なんだもん、そう続けようとした唇はデンジのそれに塞がれた。 ぽかんと開けていた口内ににゅるり、舌が入ってきて絡め取られる。 ちゅ、ちゅと音をたてて舌を吸われ、身体から力が抜ける、頭がふわふわし始めた時。 「ふ…、」 「ちゅっ…ん、可愛いな」 「ば、か……」 「こうするのも、こうしたいと思うのも…、お前だけだ」 これで信じようと思ったわたしは相当単純である。 けれども好きなのだからしょうがないと思う。 ほら乗れ、とデンジが背中を向ける。 それに甘えて背中に体重を預ける、暖かい。 「デンジ、ごめんね」 「いや、気にしてない。むしろ嬉しいな、嫉妬したんだろ?」 「え、いや…!」 「いやーナマエが嫉妬してくれるなんてなー!」 …デンジの首に回していた手に力を入れた。 背中に電気が走った (ぐえっ!) 100623 |