それは彼とテレビを観ていた時のことである。 しかし何を観るでもなく、ただテレビを点けていてその正面にある長いソファーに二人並んで座っていただけなのだが。 わたしはボケーとしてただ液晶画面を観、右隣りに座っているシンジは興味なさそうに本を読んでいた。 「あ」 「……」 『猫と家鴨が力を合わせてシンジ君に幸せをー♪』 『「招き猫ダアック!」』 「!?(ビクッ)」 某保険のCMと一緒に歌ってみた(いや、叫んでみた)、ら、シンジが肩を揺らしてわたしを凝視した。 そんなに嬉しかったのか、なんだシンジにも可愛い所あるじゃないか。 と思ったのもつかの間、シンジは恐る恐るわたしにこう言ったのだ。 「…頭大丈夫か」 「失礼なヤツだなお前は」 「気味の悪いことをするお前が悪い」 本当に失礼なヤツである、わかっていたことだけれど。 シンジはわたしから目を離して再び本へと向けた。 わたしはその仕草を見送り、背もたれに体を預ける。 ころころ変わるCM、つまらないテレビ番組、窓から差し込む光、ペラリと本をめくる音。 何もかも楽しいものではないけれど、わたしは満足していた。 …答えはわかっている。 「シンジには幸せになって欲しいって思ってるのはほんと」 「……」 「まあ招き猫ダックに頼るつもりはないけど」 「……」 「わたしが、シンジを幸せにしたいの」 「……」 無反応なのはいつものこと。 でもちゃんと聞いてくれているのは知っているから。 無意味に点けていたテレビの電源を切り、外に目を向けた。 レイジさんがポケモン達と遊んでいるのが見える、楽しそうだ。 ああ、あたたかい……。 「………」 「………」 「……」 「……?…おい、寝たのか?」 「……ぐう」 「…こんなとこで寝ると風邪引くぞ」 「んー」 「はあ…阿呆が」 「…俺を幸せにしてくれるんだろ?」 「だったらまず自分の体調管理をしっかりしろ」 「くかー」 「…色気がないな」 まあそんなお前も気に入ってるんだが。 幸せにするのは、わたし(俺) (ちゅ)(部屋まで運んでやるか) 100620 |