グリーンさん、ねえグリーンさん。 小さな口で、可愛らしい声で俺を呼ぶ。 鼓膜が震えると同時に俺の体も甘く震えた。 グレン島で初めて出会った時の彼女は生き生きとした瞳をしていて、真っ直ぐに俺を見た。 それは今も変わらないが、俺の心は変わった。 ドキドキする。 「ナマエ」 「グリーンさん」 彼女が俺を呼ぶ度に、彼女が俺を見る度に、彼女が俺に勝つ度に。 俺は、君に、恋をする。 少し時間ができたらナマエの声が聞きたくなって、無意識にポケギアを弄る。 今日もそうだった。 1番上に表示される彼女の名前を見て笑みを浮かべる。 その時だ。 ピリリリと目の前の機械が鳴る、画面にはナマエ≠フ文字が。 俺は慌ててそれに出た。 「も…もしもし?」 「あ、グリーンさん?ごめんなさい、急に電話かけちゃって…」 「いや、構わねぇぜ」 俺の声は震えていないだろうか。 俺らしくない、心の中で自嘲して彼女の声に耳を傾けた。 あのね、今…、 と控えめに話し出すナマエ。 声は明るく、笑顔で話していることは容易に想像ができた、見てえ、な。 「‥あ、すいません、忙しいのに長々と喋っちゃって」 「気にすんな、俺も良い気分転換ができた」 「ありがとうございます‥」 「あ、なあナマエ。お前日曜の夜暇か?もしよかったら、」 「バトルですか!?」 「おっ‥、おお」 「暇です暇です!!いつもの道場ですよね?絶対行きます!」 彼女の変わり様に笑みが零れる、この子も俺やレッドと変わらねぇ、バトル馬鹿なんだな。 俺はナマエとのバトルを好む、こんなに楽しいバトルは中々できねぇってくらい白熱するからな。 しかし俺からバトルに誘ったのは初めてだった。 ナマエは俺に勝ち、あまつさえ俺のライバルであるあのレッドに勝ったんだ、まだまだ旅を続けている身。 俺みたいにジムリーダーをしているわけではないから、中々誘えなかったのだ、彼女の邪魔はしたくない。 内心落ち着かなかったのだが彼女が余りにも喜ぶものだから、俺まで嬉しくなってきた。 「今度も負けませんよ!」 「ふ、今度こそ倒してやるよ」 「今から特訓しなきゃ!じゃあ失礼します!」 「ああ、またな」 そうしてポケギアを切ろうとボタンに手を伸ばした時、向こうからあー!と叫び声が聞こえた。 どうした!?とらしくもない、慌てて聞くと、 「えと、…………………好きです!!!」 「は!?ちょ、おま[ブチッ]」 ………言い逃げかよ。 悔しくて呟いた声がジムに響いた、日曜覚悟しとけよナマエ。 Your sweet xxx! (それは彼限定で飛び切り甘くなる) 100311 |