「やあ、ナマエ」 「……え、」 お前は誰だと言いたくなった。 我が故郷のマサラタウンに帰ってきた時の話である。 わたしはとても久しぶりに幼なじみに会ったのだが、はて、彼はこんな感じの男の子だっただろうか。 最後に会ったのはいつだったか、その時は彼の周りには何人もの綺麗なお姉さんがいてキラキラしていた。 彼も満更でもない顔でいつもの様にわたしを見下すような事を言っていたのをよく覚えている。 それからどれくらい時間が流れたのだろうか。 少なくとも、彼がこんなにも変わるくらいには経っていたのか。 「久しぶりだね、元気にしていたかい?」 「え?あ、ああ…うん。そっちは?」 「僕は元気だよ、研究も捗ってるしね」 ああ、彼はオーキド博士の後を追う道を選んだのか。 彼はバトルの才能もあったのに、勿体ないと思うが彼が決めたことならしょうがない。 わたしの目の前にいるのは随分と大人っぽくなったシゲルだった。 服もそれに似合ったもので、彼の雰囲気をよりいっそうらしくしている。 キラリと光るネックレスが少し眩しい。 「そっか、なんか安心したけど…寂しいなあ」 「どういうことだい?」 「シゲルに合ったものが見つかってわたしも嬉しいけど…、わたしの知ってるシゲルがいなくなっちゃいそうで、」 そう、わたしは戸惑っているのだ。 外見だけではなく中身も変わったらしい、わたしの知っている彼はそこにはいなかった。 初対面の人と話しているという錯覚を起こしてしまう。 変わる、というのは恐ろしいものである。 「………、」 「どうしたの?」 「え‥、いや…ナマエ変わったね」 「……え?」 びっくりだ。 まさかわたしが言われるなんて。 わたしのどこが変わったのだろう、服装?性格? 自分ではわからないものだ、‥ああシゲルもそうなのかもしれない。 「シゲルも変わったね」 「ふふ、僕はサトシと色々あったからね」 男の友情は羨ましい。 女のわたしには入れない関係がそこにあるからだ、幼い頃から寂しいと感じたことが多々あった。 シゲルが変わったことにもう一人の幼なじみのサトシが関係しているらしい。 それにしてもシゲルは自分の変化に気付いている様だ、びっくり二回目である。 「わたしのどこが変わったと思う?」 「ん?そうだなあ…僕を見てくれたとこ、かな」 ‥ああ、安心した。 全てが変わった訳ではないらしい。 昔の彼がいて嬉しくなったが、言葉に苦笑いを浮かべるしか無かった。 「意味わかんない」 「そのままの意味だけどなあ」 「わたしは昔から見てたつもりだったけど」 「嘘だね、ナマエは今ようやく僕を異性として見てくれた」 「え、」 「だから言うよ」 「何、を?」 大好きだって。 シゲルの形のいい唇がそう動いた、あ、今なんだかすごくときめいた気がする。 わたしも彼も変わったのか。 移り行く時の中で (変わらないのは恋心だけ) 100310 |