ごめん、 無口な彼がポツリと呟いた。 わたしを胡座の上に乗せて後ろから抱きしめる彼。 ふわりと彼の匂いが鼻を掠めてトクンと心が暖かくなった。 「レッドさん…?どうしたんですか?」 いきなり謝るなんて。 謝られることをされた覚えはない。 寧ろいつも幸せに過ごしているというのに。 後ろを振り向こうと首を動かす。 目があったが、彼のそれはゆらゆらと揺れていた。 悲しいの? 「俺はグリーンみたいに君を喜ばせてあげられる言葉を言えない。基本無口だし、バトルばっかりで気の効いた話題がない」 「レッドさん、」 「こうして一緒に居ても何をするわけじゃない」 「レッドさん、」 「君を楽しませることが…、」 「レッドさん!!」 「…っ!」 そんな言葉聞きたくない。 その一心でわたしは思わず大きい声をあげてしまった。 びくりと彼の体が震える。 抱きしめられていた腕を解いて、レッドさんと向き合った。 ゆらゆら、さっきよりレッドさんの瞳は揺らいで、眉はハの字を描いていた。 「わたしはそんなこと思ったことありません、」 「……」 「レッドさんと一緒にいるだけで幸せです」 「ナマエ、」 「わたしはレッドさんが大好きです。だから、」 ぎゅう、と今度は正面から抱きしめられた、まだ途中なのに。 むっとなったがレッドさんの匂いがさっきより強くなったのを感じて良い気分になったので許してあげよう、ああなんて単純なのわたしって。 わたしも負けじとレッドさんの背中に腕を回して力を込める。 大好きだよと想いを込めて。 「…もう、喋っちゃだめだ」 「なんでですか?」 「………照れる」 「ぷっ!」 「っ、笑うな!」 だってだって、あのレッドさんが照れるんだよ? 可愛すぎる、なにこの人!! レッドさんは不器用だ。 ポケモンバトルになると別人の様になるが。 わたしはそんなところに惚れたのかもしれない、ギャップって怖いなあ。 体を勢いよく離され、今度はレッドさんがむっとする番である。 眉間にシワを寄せているが、如何せん頬が赤く染まっているので怖くもなんともない。 「可愛い、」 「…!」 「あ、ごめ、んん!」 そうやってムキになるところも好き。 そう思いながら重ねられた唇に酔いしれることにした。 世界は赤 (レッ、ドさ‥ん!苦し…)(まだだめ、ちゅ)(んー!) 100308 |