poke short | ナノ



 


ピピッ


電子音が小さく主張して、あたしはそれを脇から取り出した。




「あー…」




やっぱり。


予想していた数字に思わず溜め息をつく。

それに気付いたシンジがこっちを向いた。




「体温計れたのか?何度だ」


「あ、はは、微熱だった」


「…見せろ」




あたしが体温計をリセットするより早く、奴はそれを取り上げた。


ああ、駄目だ怒られる。




「…39度、だと?」


「……はい」




びくびく。

シンジをチラリと見る。

ベットの中にいるあたしからじゃ、その表情は見えない。


結局シンジは何も言わず部屋を出て行った。


途端、一人を意識してしまい、寂しさにおそわれる。

気を紛らわせ様と頭まで布団を被った。




「…おい、出てこい」


「え?」


「濡らしたタオル、持ってきてやった」


「う、あ、ありがと…」




ぶっきらぼうな声が聞こえて顔を出す。

そこにはタオルを持ったシンジがいた。

ほっと安心して、頬が緩む。


そっと額に置かれたタオルはひんやりと冷たく、その心地良さに目を細めた。




「…今日はずっと寝てろ」


「うん‥ありがと」




あたしの返事を聞いたシンジは背中を向けた。

部屋を出ていくのだろう。


………やだ


声を出すよりも早く、手が出た。




「!?」


「……」




シンジの服の裾をきゅっと掴む。

一瞬よろけた彼は、顔だけこっちを向く。


何だ、と発せられた言葉に息が詰まるような感覚を覚えた。


一緒にいてほしい



そう言うには羞恥心が捨て切れなくて。

視線をふわふわと泳がす。


そんなあたしの様子にシンジは怪訝そうな顔を浮かべた。


ああ、言わないとわからないのだ、この人は。




「あ、のね‥」


「…?」


「こっ、心細いか、ら、その‥傍に…いてほしい、なあ……なんて」


「‥‥‥」


「シ、ンジ?」




そわそわ、

反応のないシンジに不安を覚えながらも、返事を待った。


すると、裾を掴んでいた手にシンジのそれが触れた。

そっと離され、布団の中に仕舞われる。


その行動にやっぱり駄目だったかなと落胆した。




「…寝付くまでだからな」


「‥いいの?」


「…今日だけだ」


「ありがと…」




シンジは溜め息をつくと、ベットの側にあった椅子に座る。


嬉しくなってくすくすと笑う。

シンジは早く寝ろと言い、あたしの手を握ってくれた。


暖かい‥、安心する感覚に、瞼が重くなる。


歪む視界にシンジだけがはっきり見えて、良い夢が見れそうだと思った。








…………。



「すーすー‥」


「寝た、か…」




疲れが出たのだろう。


子供っぽい寝顔に笑みが零れる。

いつもは中々俺を頼らないコイツが、不安そうに俺を見て頼る姿は言いようの無いくらい愛おしかった。

空いている手で頭を撫でてやる。


早く良くなれよ、そう呟いてナマエの手の甲にキスを一つ。


そして俺はそっと部屋を出た。




元気なナマエがみたいから
(粥でも作ってやるか)


091106






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