…が、今度は俺が腕を掴まれている形になった。驚いてなまえの方を振り返ったけど、俯いていて表情が読めない。
どうしたらいいんだ…。逃げるような行動を取っていただけあってなんだか気まずいことこの上ない。
返事を貰う勇気もない俺は戸惑いと気まずさと不安でいっぱいだった。ここで、やっぱり吹雪先輩が、とかお前なんか嫌い、とか言われてみろ、立ち直れる自信がない。
ていうか、好きとは言ったけどアレってちゃんと告白ってとられてるのか?うわ、もう最悪だ。本日何回目かの自己嫌悪に陥った時なまえから微かに声が聞こえた。

そしてすぐに、その声ははっきりとした大きな声に変わった。

『…か、…馬っ鹿じゃないの…!?自分だけ勝手に喋って私の意見なんてまるで聞く気無しだし、しまいには、こ…告白なんてしてくるし…!!』

思わずたじろいだ。凄い剣幕で睨んでくる割には泣いていた名残で目が潤んで赤いし告白って言うときに頬も赤くなっていて、こんな反応をすることがあるんだ、と一種の感動さえ覚えた。
「…しかも、いきなり名前呼びとか無しでしょ…。」完璧に顔が赤くなったなまえは漫画とかだったら顔から蒸気が出ているに違いない。
そんなこと思いつつも俺だって顔に熱が集まってきている気がしてならない。

『……私だってさ!その…謝りたかったし、雪村、昔のことなんか覚えてないんだろうなって思ったら、なんか悲しくなってきちゃって…、』

「昔の、こと…?」

『覚えてるわけないよね、』

心あたりは一つあった。けど、そんなの本当にガキの時だしなまえがずっと覚えてたともそれを俺が忘れてると思って悲しむともなんだか思えなくて、他になにかあったかと考えた。

『…雪村、別に思いださなくても良いよ?なんか、恥ずかしくなるし…。』

「…いや……、あのさ、違うかもしんないけど言ってみていいか?」

『え、うん…』

「昔、俺がなまえに、その…好きっていうか結婚とかの話したアレ?」

恋愛感情とかきっと全くわかってないで言った話だったんだろうけど、今では意識してしまうような言葉だった。
確か、大きくなったら結婚しようね。みたいな漫画とかの幼なじみの男女の大体がいう様な感じ。でも、そんなままごとの様な言葉を本気にしてた訳ないよな、そもそも俺のこと好きかなんてまだわかってないし。
それでも試しにと言ってみたら当たりだったみたいで、なまえは再び顔を赤くして目を丸くさせた。マジかよ…。

『…雪村、覚えてたんだ。』

なんか嬉しいな。なんて言ってえへへと笑ったなまえが無邪気さがあって可愛いと思えた。なに思ってんだよこんなときに!え、だって、なまえは…

「え…なまえは、吹雪先輩のことが好きなんじゃないのか?」

『吹雪さん?好きだよ。でもほら、吹雪さんは憧れっていうか、ね?また違う好きだよ。』

は…?憧れ?もしかして、俺はずっと勘違いしてたってことなのか?思わずぽかんとする俺に痺れを切らしたのか、なまえは大声で「だから、雪村が好きだって言ってんの!!」と言った。
若干喧嘩腰なのはもう慣れてるし、いつもならそれで喧嘩になるけどこんなときに喧嘩とか馬鹿らしいし、何より頭が混乱していて意味がわからなくなってる。
なまえは大声を出したのは業とでは無かったらしく、周りの目線に気づいたのかはっとした顔をしてから恥ずかしそうに縮こまった。

「……っ…。」

『うわっ…!ゆ、雪村!?』

「…好き、だ。」

『え?う、うん。…あの、離してよ。』

「やだね。」自分でもなんでなまえを抱きしめてんのかわかんないけど、離したくは無くて更に力をいれた。

『…っ、ねぇ離してってば、苦しい。』

「嫌だって言ってんだろ。大人しくしてろって。」



『…………、離せって、言ってんでしょ!』

「!いって…!!何すんだよ!」

五月蝿くなくなったかと思ったら、いきなり殴ってきやがった。普通殴るか!?空気読めよ!くそっ、結構痛ぇ…。女のくせにすげー馬鹿力。
でもまぁ、なまえは顔真っ赤だし離さなかった俺も悪いけどさ。

『雪村が悪いんでしょ…!馬鹿!ばーか!』

「はぁ!?そっちのが馬鹿だろ、馬ー鹿!」


どうやら、簡単には喧嘩をしなくはならないらしい。餓鬼っぽいと思いつつも、なんだかんだ楽しんでる俺も俺だな。……でもやっぱムカつく。

End.
2012.06.17

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