腕に微かな痛みが走る。それは継続的に続いていて、なんだか慣れてしまった様な感覚さえ覚えさせた。
でも、多分もう遅いんだろうけど跡が心配だな…、痛みは消えかけててもそれは続いてるんだから跡がついててもおかしくない筈。
問題なのはそこだけなんだけど、なんとなく構ってみたいな感じがしていきている気がするから、どうやらほっとこうと思ったけど無理みたい。

『ねぇマサキ、そろそろ離してくれない?』

「なんで」

『痛いから。それに跡ついちゃうじゃん』

意味がわからないとでも言いたそうな顔をして顔をあげたマサキに、やっぱり何がしたいんだろうって思いながら理由を言うと何故か渋々私の腕から手を退けた。

マサキは時々よくわからない行動をする。さっきのもそうだし、いきなり抱き着いてきては黙って俯いたままだったり、服の裾野を遠慮がちに引っ張ってみたりだとか。
でも、どの時においてでもその時ばかりは何も話さないし、私から問いても一言二言しか喋らずどうしたら良いのかわからないまま、まぁ大方学校で嫌なことがあったとかそんな感じなんだろうな、
と一人で納得してみるしか出来なくてとりあえずはその場が終わるのを待つしかなかった。


「別に跡くらいついてたっていいだろ、どうせ服で見えないんだし」ボソッと不機嫌そうに言われた言葉に溜め息がでそうになるのを堪えて、「そういう問題じゃないんだけどね」と訂正をいれた。
服の上からだったから平気かなって思いもしたけど、一応袖をめくって確認してみたら案の定爪と指の跡がついていて気が沈んだ。
だけど、あんな発言をしておきながら少し心配そうな表情をしているマサキは素直に可愛いと思えた。

「……怒ってたりすんの?」

『なんで?』

「大丈夫だよ」マサキの頭を撫でるとホッとした様な顔を一瞬してから恐る恐るといった感じでよくわからない質問をしてきたから、質問を仕返してしまった。
私は怒ったように見られる顔をしていたのだろうか…。心配になったのもつかの間、「なんとなく」と言ってきたからきっと罪悪感が少しでもあった故の発言なんだろうなと勝手に理解した。
罪悪感感じるならやらなきゃいいのになんて思っても意味ないんだろうな…。





「なまえは俺のこと嫌い?」

『嫌いじゃないよ。』

「じゃあ好きなわけ?」

『どうだろうね』

なんで嫌いを前提で聞いてくるのかわからないけど、私に好きかと聞いてもこういう答えしか返って来ないってわかってるからなのだろうか。もう何回もこの会話を繰り返しているからそう思ってるのが妥当だもんね。
でもマサキはその答えに対してなんではぐらかすんだって言ったりするけれど、私は別にはぐらかしているつもりは無かったりする。事実、好きかどうかわからないだけなんだよ、ただわかってるのは嫌いじゃないってだけ。

じゃあ逆に、マサキにも同じような質問を仕返してみようか。そうしたらどんな答えが返ってくるんだろう。
試したことも想像したことも無いからわからないけれど、試す価値があるってものでしょ。

『マサキは私のこと好きなの?』

「…………」

黙っちゃったか、と少し後悔が生まれてきた。するとマサキは立ち上がり無言のまま何処かへ言ってしまった。何か言ってくれたって良いのに。
どうして悲しそうな表情をしていたのか気になる、でも今マサキを追いかけたところで無言なことに変わりないだろうから無駄なことはしないでおこう。







私の中でただ一つわかることは、もしもマサキのあの無言で私を掴んだりする行動が何かを意味していて、
嫌なことがあったとかそういう訳じゃなく私に対しての行動や言葉が全て愛故だとしても、私はその全てを拒まないということだけだけれど、




私はそれでもきっとマサキを恋愛対象として見ることは無いだろうけど、それだけでも良いのならずっと傍にいてあげることも出来るんだよ。





でもそれは、きっとあまりにも酷い考えなんだよね。



(c)venus
2012.05.21

戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -