『輝ー。』

さっきからサッカー雑誌を読んでいる輝を呼ぶと、「なんですか?」ってキョトンとした顔でこっちを向いた。「なんでもないよ。」って言うと、また雑誌に目を落とす。
その一連の動作をもう今日何回したかわからないほどになってるけど、なんでもないと私が言う度にそうですか、ってまるで頭にはてなを浮かべた様に言う輝がとても愛らしく想えて楽しくなって来ている私がいた。

けど、なんとなくつまらないという感情は消えることは無くて、私の表情は仏頂面とにやけたみたいな顔が交互に現れていることだろう。
別に、輝といることに文句は全くないよ。でも、一応私達は付き合ってるわけで、それなのに、一切なんにも進展が無いっていうのは私だってちょっとは不満を覚えるわけだ。

勿論、輝は奥手だってことはわかってるけど、幾らなんでも今まで私達がキスしたことは疎か、手を繋ぐのだって殆ど私からだった。
今は、輝から繋いでくれることも多いけど、抱き着くのも殆ど私からだし…。私が積極的すぎるのか、真偽の程を伺いたいね。



一人で悶々と考えを巡らせていると、輝がなまえさんって呼んできた。少しびっくりしたのを気づかれないように普通の素振りを装って輝の方を向く。

「これ、見てくださいっ」

輝が指を差している箇所を見るために傍ににじり寄っていった。すると輝が私の方に身を寄せて来たから少しばかり驚いた。
真横に、動けば触れてしまえるような位置に輝がいることにドキドキと心拍数が多くなっていってる気がして、バレないか要らぬ心配をしてしまう。
人並みの欲求はあるけど、それがふとした時には恥ずかしく、というかどぎまぎしてしまうのはなんでなのかな。



覗いた誌面に載ってたのは、日本のプロリーグで活躍してる風丸さんと壁山さんで、輝はそれを楽しそうに見ていた。

「二人とも凄いですよね!こんなに大きく写って、格好良いなぁ…!」

目をキラキラと輝かせている様子がとても嬉しそうで、とても可愛かった。本当、サッカー関連のことには楽しそうにするよね。
そんなことを思いつつ、相槌をうちながらちらちらと輝を見ると、私の視線には気づかず目を輝かしていた。うん、もう可愛いならそれで良い、としたら良いのかも知れないな。これはこれで楽しいし。










久々に部活の練習が無くて、僕の家になまえさんが遊びに来ていた。
最近はあんまりなかったけど、珍しくはないからなまえさんが部屋にいるということに対して多少の緊張は減っていて、それでもなんだかドキドキと鳴っている心臓の音が聞こえてないかな、って不安になる。


雑誌に集中力を移して隠そうとしてみるけど、時々自然と視線がなまえさんの方に移動しているのが自分でわかる。
なまえさんは本を読んだり、携帯を弄ったり、色々なことをしていたけど、たまに僕の名前を呼んではなんでもないと笑ってみせた。
その度に、何か言う事が有ったわけじゃないのかなってよくわからなくなるけど、なまえさんの笑った顔を見るとそんなことどうでも良くなった。


なんでこんなに可愛い表情をするんだろう。ころころと変わり易い顔は見ていて楽しいし素敵だと思う。
でも、他の人もそう思ってたりしたら嫌だなぁ…。僕だけのものにしたい、なんて勝手な独占欲が沸いて来てしまう自分がちょっと嫌になる。


だからといって、なまえさんは、その、スキンシップが多いと思う…。最近は手を繋ぐのは僕からでも出来るけど、いきなり抱き着いてくるのは少し止めて欲しかったりする。
だって、普通に天馬くん達がいる前でもしてくることがあるし(その度に凄く皆、主に狩屋くんにからかわれる)、悪いときは部室でだってある。
流石に恥ずかしいし、いくらなまえさんの嬉しそうな顔が見れるからといって、羞恥心が消えるわけじゃない。


でも、今日は他の人が居るわけじゃないし、少しくらいは俺から接近してみたりとかしてみたいかなって曖昧なことを思った。俗に言う魔がさしたってやつなのかな…?


なんだか考え事をしているような表情のなまえさんを呼ぶと、ハッとした顔をしてから僕の方ににじり寄ってきた。別にこの距離でも見えるだろうけど、勇気を出せって自分に言って更に距離を縮めてみる。
なまえさんの頬が少し赤くなったのはきっと気のせいじゃなくて、それが嬉しく思えたりもした。


きっとなまえさんには、ただ雑誌の内容を楽しんでいるように見えるんだろうけど、
そうじゃなくて、実はなまえさんのすぐ近くに居られることが嬉しいんです。って言ったらなまえさんはどういう反応を示すんだろう。


そんなことは恥ずかしくて言えないけど、その変わりにたまには僕からなまえさんを抱きしめたり出来たら良いな。


まぁとりあえずは、こっちにちらちらと視線を送っているなまえさんに気づいてますよ、と言って笑ってみようかな。



――――――
QBさま、リクエストありがとうございました!
ニースくんは、口調と性格が大体でしか分からず、輝くんにさせて頂きました。
輝くんは奥手かなと個人的に思っています。これからも当サイトをよろしくお願いします!

title byLulu

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