はぁ…。と、溜息が吐き出された。あぁ、今日も来ていないのかな…。なんて思いながら屋上のフェンスの側に立ち、そこから見える景色を何処に焦点を合わせるわけでもなく見つめていた。


幾日か前、暇つぶしで屋上に来ていたときにいきなり現れた不思議な人。なまえはその人を待っていた。
といっても、その人は誰だかもわからないく、少しだけ話をしただけで名前も知らなかい。なんとなく、聞いて良いのかわからない。そう思ったから。

けれど、その時のことが忘れられず、もしかしたらという期待を込めて、時折出会った場所に来ることにしていた。




空には、青が広がっていて、所々に雲が流れている。心地良く風が頬や髪を撫でるので、そのまま眠りにつきそうになった。

このまま、寝てしまおうか。そう思った頃、近くから声が聞こえた。誰かと思って、辺りを見回すと、なまえが待ち臨んでいた相手が目に入った。

こんにちは、と挨拶をしてみると、相手もこんにちは、と返してきてくれたので、それがなんだか嬉しくて思わず顔が綻む。

『また、会えましたね。もう会えないのかと思ってました。』

「…もしかして、待っていたりしたの?」

『まぁ、そんなところです。』

照れたように微笑むと、相手は少し驚いた表情をして、吊られた様に笑った。




話ながら、どうしよう、となまえは悩んでいた。相手のことが知りたいと思いつつ、聞いても、また彼は来てくれるのだろうかと不安にもなっていたから。

でも、なまえは少なからず彼に好意を抱いていたこともあり、彼への興味の方が自分の中で上回った。




『…あの、私なまえって言います。貴方の名前は?』

「…俺の名前?」

『はい。』


「俺は……、閻魔」

『閻魔、さん…?』

思わず、なまえは首を傾げ繰り返した。

「そう。閻魔大王。」

閻魔は、どこか哀しそうな微笑みをみせて言った。
なまえは、少し困惑していた。まさか、自分が話ていたのが、名前を聞いたことしかない閻魔だとは思わなかったから。だけど、それは直ぐに無くなった。

『そっか、閻魔大王さまか…。なんか、不思議な感じしてたんだよね。』

ふふっ、と笑いながら納得したように呟くなまえを、閻魔は不思議そうに見ていた。普通、そんな簡単に受け入れられるものなのだろうか。そう思っていたからだ。

『ねぇ、閻魔さん。…私を閻魔さんの本来いるところに連れていってくれませんか?』

「…それは、なんで?」

『烏滸がましいかも知れませんが、私は、閻魔さまを好きになってしまったらしいのです。初めてお会いして、お話した時から、傍にいれたら幸せなんだろうなと思っていました。』

まさか、あの閻魔さまだとは思っていませんでしたけど。なまえは、微笑みながら、相手を思いながら言っていた。


「…そう思ってくれるのは嬉しいよ。だけど、君を連れていくことは出来ないな」

困ったように告げた閻魔は、なまえのことを愛おしく思っていた。閻魔も、初めて会ったときなまえと同じ様に思っていたからこそ、再びこちらがわに降りて来ていたから。本当は、傍に置いておきたいと思っていたから。

『…そう、ですか。』

「君はまだこっちに来るべきじゃないんだよ。だから、ね。」

納得したような台詞を言いながらも、不服のような表情をしているなまえに、閻魔は小さな子に言うように優しく言った。


『……わかりました。でも、時々…本当に時々で良いんです。此処に来て、話をしてはくれませんか…?』

我が儘を言ってると分かりつつも、なまえは恐る恐る尋ねた。

「うーん…たまに、なら。」

本当にたまにになってしまうだろうけど良いの?閻魔が聞くと、なまえは嬉しそうに、はいっ。と言って笑った



―――――

たまにとか言いつつ、頻繁に来て鬼男君に怒られるんだろうなって

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