かみつく
 

目を開けて、体が痛くないことにおどろいて、そのつぎに、体のあちこちに白い布がまかれていることにおどろいた。

なんで。なんでこんなところに。

「お、目が覚めたのか」

ふりかえると、にんげんがいた。

────


結局なんて名前だったか。青いのの様子を見にポケセンに通うこと数日。
たくさんの管が繋がっていて、あちこちぐるぐる巻きだった小さい身体も、だいぶ見れるようになった頃。

いつものようにベットから少し離れたところに腰掛け、膝の上にパソコンを置く。
包帯の数からして回復はしてるようだし、あまり心配はないだろう。ジョーイさんも大丈夫って言ってたことだし。




ごそりとした物音に顔を上げると、ベットの主が体を起こしていた。

「お、目が覚めたのか。ちょっと待ってろ。ジョーイさん呼んでくるから」

目が合った途端、鼻にシワを寄せて唸られる。思いっきり拒絶されてんなあとため息をつくと、青いのはあからさまに怯えた表示を浮かべてジリジリとベットの限界まで下がった。
それでも唸るのは止めない。おいおい大丈夫か

「あー、お前は俺に保護された。保護、わかるか?俺が、お前を助けた。んで、俺は医者を呼んでくる。お前は何日も寝てたんだ。」

しゃがみこんでゆっくり話す。
このままジョーイさんのところに行ったら逃げんだろコイツ。いくら窓とドアに鍵がかかってたとしても、無理に動くのは阻止したい。

「ここで待ってろよ。大丈夫だから。」

言い残してそっと立ち上がろうとすると、険しい顔でだんまりを決め込んでいた青いのは、助走なしで一気に俺に飛びかかり、腕に全力で噛み付いてきた。

「いっ」

体制を崩し、後ろに倒れ込む。ぎりぎりと牙が腕にくいこんだ。

マウントを取った青いのは、腕を振りかぶり…殴ろうとしたところでフラついた。顎の力も緩み、腕が抜け出す。
そのまま横にゆらりと傾く身体を反射的に受け止めると、それはビクリと震えて硬直した。
ああもう!腕いってえし結局無理に動くんじゃねーかこいつ!!

「このままベットにお前を運ぶ。いいな?」

血がダラダラと滴る腕で青いのを抱き上げて、ベットに座らせる。
白いシーツに赤いシミが出来た。

「手、離すぞ。なにもしない。医者を呼んでくる。待ってろ。大丈夫だから」

唸り続けるそいつは、手を離したことによって少しふらつく。痛みに耐えるように歯を食いしばって、相変わらずこちらを睨みつけていた。がるるる

もう一度大丈夫だからと言って、ゆっくりと病室を後にした。ああもう腕いってえ!
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