鋼錬軍部女主
ザッ…ザザッ…とノイズが響く小さなトランシーバーに向かって小さく声をかける。
「ハボック少尉、大佐の書類が少なくなっています」
『こちら休憩中のブレダ。中尉の姿を確認した。そろそろ司令室に入るぞ』
「あ…中尉を確認しました。まっすぐ大佐の元に向かってます」
『こちらハボック、そろそろ作戦決行していいと思うぜ』
「了解しました!」
名付けて中尉と大佐がいい加減もどかしいのでラブイベントを発生させよう作戦≠セ。
発案者は私。ちなみに各々差はあるが徹夜済である。
チャンスは大佐が席を立ち、中尉が大佐の隣にいる一瞬のみ。
私が中尉に不注意を装ってぶつかり、よろけた中尉が大佐に支えられるという作戦だ。
我ながら完璧…!
少し離れたところで書類と格闘しているハボック少尉と目配せをして、出来上がった書類を提出しに行こうと立ち上がる。
この口実を作るために仕事頑張った!
中尉の後ろを通り、大佐が腰を浮かせたのを確認してから、わざと足をもつれさせた。
何枚かの書類が空に浮かぶ。
あとはこのまま中尉に軽くぶつかれば…!
と、腰に腕が回り、私はよろけた姿勢のまま静止した。
…?
パサパサっと書類が落ちた音がする。
思わずハテナを浮かべたまま固まると、中尉が私の顔をのぞき込んで言った。
「大丈夫?寝てないんでしょう。残りは大佐にやってもらうから、貴女は少し休んできなさい」
中尉の腕に抱き抱えられたまま「は、はい」と返事をする。え、なに?中尉に抱き抱えられた??
「え、あの中尉…?」
「どうかした?」
「いや、あの、有難うございます…」
思わぬ展開に顔が熱くなるのを感じる。うっわー恥ずかしい!
立ち直って書類をしっかり提出し、席に戻ると、目が合ったハボック少尉が呆れた顔で「なにやってんだお前」と口を動かした。
うん…ごめん。うっかりときめいてしまった…
「はは、男前だったな中尉」「貴方ははやくその書類を片付けてください」といういつものやりとりを聞きながら、トランシーバーを手に取る。
「作戦失敗のため、プランBに変更します!」
いくつかのため息が、トランシーバーごしに同時に聞こえた。
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ロイアイを応援しつつ軍部組と仲良くなる話
階級は軍曹〜准尉ぐらいで