さよならマイヒーロー
 

「お前…大蛇丸の手下か?」

「……そうだよ」

目の前に立つのは画面越しに何度も見たことのある、金髪のヒーロー。ああ、もう少し早く、俺のことを見つけてくれれば、なんて馬鹿な考えを打ち消すようにうっすらと口角を上げる。

「残念だけど、ここにうちはサスケはいないよ」

ヒーローを中心に集まった三つの人影を見つめながら、ゆっくりと話す。コイツらは俺を倒して、うちはサスケを見つけるだろう。自分の未来が分かっていても、俺はここに立ち塞がらなくてはいけない。

「そして、俺は君を倒さなきゃいけないんだ。大蛇丸のために」

「どうして?どうして大蛇丸なんかのために戦うの?」

叫びだしたくなるような問いかけに一度息を吸ってから俺は笑った。

「大蛇丸は、俺を救ってくれたから」

急に知らない世界に落とされて、金も、食べ物も、頼れる人だって無い。今いる場所がどこかすら分からない。生きるために盗みをするしかなくて、忍者でもなんでもない俺は弱くて、何度罵られて、殺されそうになって、何度泣いたか分からない。

「俺だって、オマエらに助けて欲しかったよ。それを希望にして生きてきた」

ここが俺の知る漫画の世界と知ってから、いつか、いつか主人公が、ヒーローが、助けてくれると思っていた。

「いつまでたっても、ヒーローは助けてなんかくれなかった」

俺を助けたのは悪役だった。
でも大蛇丸は、俺に仕事を与えてくれた。俺は大蛇丸に拾われた。

「オマエらじゃなくて、大蛇丸に拾われたからには、恩を返さないといけない。行為に報いなきゃいけない。役立たずじゃ、また捨てられる」

カチャリとクナイを構える。人に刃物を向けるのは、まだ慣れない。

大人しくここを明け渡す訳にはいかない。
いくら俺が弱かろうと、そんなに簡単に、殺されてなんかやらない。逆恨みなのは重々承知だ。

「かかって来なよ。無能なヒーローくん」

長年の鬱憤、ここで晴らさせてもらおうか。

ああ、憧れのヒーローにそんな目は向けられたくなかったな。

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