忍者と主と新人くん
 






「おまえが新入りか。よろしくな。なにか不満があったら遠慮なく言ってくれ。お前ら忍は自分の意見というものが無さすぎる。」

「恐れながら、忍とはそういうものです。幼少期から、そのように育てられるので。主の考え方は稀ですよ。」

はぁと付き従っていた黒ずくめの青年がため息をつく。
ため息の原因であろう男は、見ている者すべてを笑顔にさせるような、気持ちの良い笑顔を浮かべた。

「初めのうちはお前も大変だったからな。怪我を負っても何も言わない、なにもしない。挙句熱までだしおって。全く、苦労したものだ。」

「貴方も似たようなものでしょう。先日も不調を隠していたではありませんか。貴方はもっとご自分の立場を自覚すべきです。」

生意気になりやがってと満足そうな笑みを浮かべた長身の男は、気を取り直したようにまだ幼い忍に向き直った。

「とまあ、今のである程度は分かったと思うが、俺はお前らをただの道具として見る気はない。部下として俺に協力し、仕えてもらう。俺からは以上だ。」

「はっ」

幼い忍びは目を合わせずに短く答えると、そのまま音もなく消えた。
その場に残された二人は顔を見合わせると、どちらともなく苦笑をこぼした。

「あれは分かっていないな。」

「ええ。ですが、仕方のないことです。言ったでしょう。あなたが稀だと。」

「分かっているさ。まあ、アイツは意地を張っていない分、楽かもしれないがな。どこかの誰かさんとは違って。」

「放っておく気はないのでしょう?そのどこかの誰かを追い回したように。」

「勿論だ。」

楽しみにになってきたと言わんばかりに口元を釣り上げた男を見て、青年は自分の部下になるであろう幼い忍を少しだけ哀れに思った。




戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -