待機所のはなし
 


ついったで「カカシとゲンマが仲良い話」みたいなのをリクエストされた時に書いたやつ(だと思います)

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「失礼します!」

昼下がりの火影邸、上忍待機所に若々しい声が響いた。まだ幼さの残る顔を少し強ばらせた青年に、情報交換という名の雑談をしていた数人は首を傾げる。
その中の一人──不知火ゲンマが「ああ、」と声を上げた。

「お前アレか、中忍になったっつー新人」

「はい!中忍になったらここを使うこともあると聞いたので」

緊張しているらしい青年に、柱の影からはたけカカシが顔を出す。急に現れた“写輪眼のカカシ”に、青年の体が更に強ばった。それを気にせず、カカシは眠そうに目を細めて腰掛ける。

「ま、上忍待機所っていうけど、実質たまり場みたいなものだ。中忍もまあ来るし、特別上忍も多いし。ゲンマとか」

「そ。俺とかな」

ニヤリと笑ったゲンマに少し緊張が解れたのか、青年はゆるく笑みを浮かべた。

「そうだったんですか… 実は、どうして上忍待機所に行けって言われたのか気になってて…」

「そりゃあ……期待されてるんじゃない?」

「期待…?」

「いっぱいセンパイがいるとこで、色んなコト教えてもらえってこと」

ここ、噂が集まるしね、と言ったカカシに、ゲンマが続ける。

「里外も増えるからな。どこそこの茶屋は美味いっつー内容から、北はまだ寒いだとか、あの橋が落ちてただとか、」

青年が「砂漠越えはキツいから気を付けろよ」「南の海鮮丼は美味かった」「谷沿いの宿の女将さん美人だったわー」と次々投げかけられる言葉に目を白黒させていると、カカシの目がにんまりと弧を描いた。

「そーだ、ゲンマさんの次の任務先、北の森の方ですよね?木の葉に恨みを持ってる山賊がいるって噂ですケド」

「げ………とりあえず敬語をやめませんかカカシセンパイ 」

「やだなあ先輩だなんて。年功序列っていうでしょ?」

「よく言うわ…… くそ生意気なガキだったじゃねーか」

ゲンマが憎々しげに肩を落とすと、周りの数人が思いだすように目を合わせた。どこからか漏れる懐かしむような声を聞いて、カカシは誤魔化すように苦笑する。肺の中の息を吐ききる程長いため息をついてからゲンマは苦虫を噛み潰したような顔で訊ねた。

「……で、なんです?山賊?」

「そ、妙に動きがいい山賊。教えてくれた人が手配書持ってたんだけどね、どーにも見覚えがあんの」

「木の葉に恨みを持ってて?妙に動きがいい?“写輪眼のカカシ”が見覚えある山賊ねえ……… うわ……」

頭を抱えるゲンマと対照的に、気楽そうに手を振ったカカシは「ま、こーゆーこと」と青年に目を向けた。

「で、でも、任務の内容とか、行き先とかは極秘事項じゃ……」

青年がおどおどと口にすると、周囲から納得するような声があがる。

「最初は念押されるわよね」「あれは脅しに近い」「あたまかてーなー新人君」とザワつき、誰かの「まあココのことは上も公認だしな」の声に皆が頷いた。え、え、とキョロキョロしていた青年は、その声でゲンマに向き直る。

「そうなんですか!?」

「そりゃそうだろ。ここ木の葉の中枢機関だぞ。情報漏洩にしちゃあ流石に堂々としすぎだろ。だからって丸々話しはしないけどな」

つまらなそうに言い放ったゲンマは、ふと目を伏せて「それに」と続けた。

「大体の行き先ぐらい知っとかねえと……帰って来なかったとき、近くに行っても手ェ合わせられねえだろ」

なんの感情も感じられない、平坦すぎるほどの口調で放たれたそれに、ごくりと青年の喉がなる。ゲンマは顔に影を落とし、うっすらと笑みを浮かべてさえいた。冷たい空気に青年が動揺した瞬間、ガチャリとドアの音が響く。

「おいゲンマ……うっわ きもちわり。なんだその顔」

ドアを開けるなり顔を歪めた並足ライドウはぐるりと室内を見回すと、なるほど、と一人頷いた。

「お前また新人であそんだろ」

「あそ……え、えっ!?」

ニヤリと笑ったゲンマに先程までの空気はない。

「きもちわりぃとはなんだ。真面目な顔してただけじゃねーかよ」

「なーにが真面目な顔だ。若者からかうんじゃねーよバカ。誰も止めねーからって」

「からかったんですか!?」

「若者は必ず通る道だぞ」

「からかった張本人がいうことじゃねえよバカ。ほら、火影様がお呼びだ」

「バカバカ言うなバーカ。じゃーな、頑張れよ新人」

ひらひらと手を振ってドアの向こうに去っていったゲンマを見て、青年はがっくりと項垂れた。「すまんな」と、残されたライドウが頭をかく。

「……あのゲンマさんすげー怖かったです」

「アイツ結構遊びたがるからな……あんま気にすんな。中忍なら用がない限りここに来ることも少ないだろうし」

「でも勉強になりました!次は冗談も流せるようにします!」

俺はそろそろ、と立ち上がった青年に、ライドウはじゃあなと片手をあげた。音を立ててしまったドアを見て、一部始終を眺めていたカカシが呟く。

「ま、冗談とは言ってないんだけど、ね」

「……何言ったんだアイツ」

「んー、“仲良いやつの任務先くらい知っといてやれ”って」

ああ、と先程の青年の背中を思い出したライドウは、苦笑ぎみに頷いた。

「そりゃ冗談じゃねーっすわ」



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