一括夢主で現代モノ
常識の範囲内のチート主で現代モノ大量クロスオーバーが読みたい〜GH編〜
デフォ名・結崎真尋
余裕があったら名前変換つけます
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出版社に今回のデータを提出して、ふらふらと街を歩く。渋谷は久しぶりだ。
今回の用事だって、たまたま近くにいて、お世話になってる方にお土産もあげたかったから、というだけの理由で足を運んだだけで。
久しぶりついでに、と、とあるビルに足を向けた。
ビルのテナント、“SPR”と書かれたドアをそろりと開ける。
「しつれーしまーす」
「はーい、あれ?真尋さんだー!久しぶり!」
「相変わらずだねー麻衣。はい、お土産」
ぽんと小さな包みを渡すと、「やたー!真尋さん、紅茶でいいよね?」とパタパタと給湯室に向かう麻衣。ちなみに中身はクッキーだ。みんなの分は別にあるから、ちゃんととっときなさいね。
「あら、久しぶりじゃない」
「おーす。俺には?」
「やほー綾子。ぼーさんはちょっとまって。えっとー、はいこれ」
「…なんじゃい、これそこで配ってたティッシュだろ」
「じょーだんよ。ありゃ、今日二人しか来てないの?」
いつものメンバーには少し足りない。全員揃う方が珍しいと分かっていても、ちょっと違和感を感じてしまう。
「真砂子はテレビのお仕事、ジョンは日曜学校ですって」
「黒い二人なら部屋だぜ」
「あ、今日って日曜か。ならしょうがないかー。はいこれ、みんなで食べて」
あの出版社、結構人いたけど大丈夫かな…と思いつつ、大きめのバックから箱を取り出す。目敏い綾子が声をあげた。有名な品だったらしい。
「あら真尋、フランス行ったの?」
「1週間くらい前にね。イギリス行ったときにちょっと寄ったの。日持ちするから大丈夫だと思うよ」
「ユーロスター?あれ乗ってみたいのよねえ」
「いや、残念ながら飛行機で。チケット取れなくてさー」
「というかお前さんフランス語喋れたんか」
「英語も微妙なのよ?そんなわけ無いじゃない」
「自慢げに言うな」
「なんとなく通じるからいいのよ」
騒いでいると、所長室のドアが開いて、黒い影が2つ出てくる。部屋を見るやいなや眉をひそめた。
「…ここは喫茶店ではないと何度言ったらわかるのですか」
「そんな所長さんにもお土産がありまーす!」
強気だな…と呟いたぼーさんにニヤリと笑ってからバックを探る。なんてったって今日は切り札があるのだ。
黒い革の袋から、ことん、とテーブルの上に置かれたそれは、女性の手のひらにも収まるような小さな手鏡だ。
縁は繊細な細工が施されているが、あちこち錆が目立つ。むりやり剥ぎ取られたのだろうか、宝石が嵌め込まれていただろう場所はただの穴になっている。
「18?19?世紀の古い鏡らしいわよ。イギリス製の」
「…これが何か」
「おばけ、幽霊、ゴースト、妖怪、私には区別つかないけど、なんかそういうモノが憑いてます」
「信憑性は」
「まあまあ、ちょっと写ってみなさいって」
いつの間にか紅茶を淹れてくれていた麻衣に感謝を述べて、一口すする。本場で飲んだのは勿論美味しかったけど、こっちも随分美味しい。練習したんだろなー麻衣。
「鏡って19世紀からとかじゃなかったか?」
「そなの?じゃあ結構レアかも。ほんとならジョンが適任なんだろうけどねえ。憑き物だし」
「…今度はなに持ってきたの?真尋さん」
「だいじょぶだいじょぶ。危ないもんじゃないらしいわよ」
「らしいってアンタねぇ…」
はあ、と溜息をついた二人を無視して、渋々ながら鏡を手にとったナルに笑顔を向けた。
「ね?何か憑いてるでしょ?」
鏡に映った自分を見て息を呑んだナルはますます不機嫌になったようで、眉間のシワがさらに深くなっていく。
ありゃーそんなことしたら悪化するだろうに。
とうとう我慢が出来なくなったらしいぼーさんが、不機嫌な所長さんから目を逸らして尋ねた。
「なー真尋さんや、ありゃなんなの?」
「“自分の笑顔が浮かぶ鏡”みたいよ。不機嫌になればなるほど満面の笑みになるらしいけど」
ピシリ、と空気が凍った気がした。わー真尋さん勇気あるぅーと麻衣が言った気がしたが、そんなことは気にしない。確信犯だし。
「結崎さん。これの入手経路は」
「向こうで飲んでたら貰ったの。研究のしがいがあるでしょ?」
極めて笑顔で言うと、軽く舌打ちをしたナルがすたすたと隣の部屋へ入っていった。右手に手鏡を持ったまま。
「…ね、あれってリンさんも巻き込む気かな」
「そりゃまた恐ろしいな…」
「というかアレ大丈夫なの?鏡よ?」
「くれたイギリス人はtsukumo-gamiって言ってたしねぇ… まあ、ずっと持ってたけど呪われてないから大丈夫よ」
「あらら、親日家なのかしら」
「でも真尋さんなら呪われても気づかなそうだよねー」
失礼な。「たしかに」とか頷いてる二人も大変失礼である。私だってさすがに流石に呪われたら気づくと思うのよ。呪われたことないから分かんないけど。
「あ、ミスった。麻衣に渡して対ナル用のリーサルウェポンにすればよかったわ」
ふと言うと、「流石にやめてやれ」とぼーさんからストップがかかった。冗談なんだけどな。