なきむしとぜろ
 

「こんにちは。コナンくんのお友達かな?」

たまたま同じ帰り道だったクラスメイトのコナンくんと、たまたま一緒に帰り、コナンくんに「じゃあね!」と挨拶してからすぐ、これまたたまたま出会った褐色イケメンさんに抱いた第一印象は

こわい

だった。

「あ、う、」

三十路なのにそうは見えない童顔の、トリプルフェイスで食えないキャラクター。それが“彼”なはずで、私はそれなりに“彼”が好きだったはずなのに、本能的に怖いと、逃げたいと思った。

「…どうかしたの?」

後ずさった私を心配してか、その場にしゃがみこんで笑顔を浮かべながら首を傾げる彼の目が、すこし、ほんのすこしだけ細まった気がした。

「ひっ」

まずいまずいこわいバレたこわいこわいどうしようにげたいどうしようたすけてにげたいまずいバレたこわい!!!!

パニック状態になった私の脳内で、どこがどう繋がったのか、イカれた回路が指示を出した。


子供なら泣いてしまえ


「うっ…わあああああああああああんっひっやだあああ来ないでええええ」

「…はっ!?」

「やだあああああ来ないでええやだああくるなどーがんんんばかあああああああああああ」

「いや、ちょっ…おちついて、」

どこか冷静になった頭の片隅で、私を泣きやませようとあたふたしている彼に全力で土下座した。いやほんとすみません。





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