君の笑顔が


「………」

「………」


今、私達はかなり気まずい状況だ。


「………なぁ…?」


私のせいで、エースも巻き込んじゃったし。


「何で泣いてんだ?」


だからってこのストレートな質問はやめて欲しい。








きっかけは単純なことだった。

真っ暗な世界の中に一人ぽつんといて、みんなの名前を呼んでも返事なんて返って来なくて、もしかしたらずっと一人なんじゃないかと思って、悲しくなって泣けてきた。

そんな夢を見たって話。

起きたら当たり前だけど自分の部屋で、いつもと同じ光景が広がっていた。

それでも怖い夢を見たって言う事実は変わらなくて、また独り泣き出した。

そんな時にドアがガチャッと開かれ、現れたのがエースだった。

女性の部屋にノックなしで入るとはなにごとだ、少しは麦藁のところの紳士を見習え。そう言おうとすれば…


「うわ!お前何泣いてんだ!?」


と、このセリフが何度も繰り返されている。


「別に…何でもない…」

「なまえ…」


怖い夢を見ただなんて言えない。絶対に笑われるに決まってる。もう子供なんかじゃないっていつも言っているのに、これじゃ子供っぽさ丸出しだ。


「…しょうがねぇな」


突然エースが立ち上がった。きっと部屋に戻るのだろう、ずっと泣いているだけで冷たくしちゃったのは謝りたいと思い、急いで顔をあげた。








「…エース…?」


気がつけば私の両脇にはエースの両腕があり、数10センチしかない距離に満面の笑みのエースの顔が。

その距離の近さに驚きつつ、現状を理解するために口を開けば…





「よーい…スタート!」







「っ!何するっ…ふ!あははははっ!!ちょっと止め…っふはははは!!!」


いきなり何をするのかと思い構えれば、両脇をいっきにこしょぐられた。

思わず笑ってしまう私を見て、エースは同じように笑っていた。いや、笑ってないで止めてよ!


「やっと笑ったな!」


そう思ってたのに、不意に告げられた言葉にハッとしてエースを見れば、今度は優しい笑みを浮かべていた。


「なまえずっと泣いてるし、何で泣いてんだかわかんねぇし…なまえには笑ってて欲しいしよ」


にししっと照れた様子で笑うエースを見て、温かい何かが自分を満たしていく気がした。



「なまえが笑う理由なら俺が作ってやるから…だから笑ってくれ!」










君の笑顔が好きだから





「…ありがとう、エース」

「私も、エースの笑顔大好き」





(20110331)



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