独りじゃないんだと


「みんな…どこ…?」


真っ暗な中で僕はいた


周りを見渡しても闇しかなくて
がむしゃらに走っても走っても何処にも着かなくて


その闇はまるで、昔の自分の様。誰にも助けを求められなかった自分の様


それが怖くて恐ろしかった


「オヤジ…マルコ…エース…サッチっ!」


敬愛して止まないオヤジ

いつも僕を暖かく見守ってくれて、優しく包み込んでくれた家族の皆


沢山の名前を呼んだけど、誰一人として答えてはくれなくて


それはまるで、自分が独りだと言われている様で


「な、んで…なんで…」


ああ、独りなんだと。誰にも必要とされていないのだと

そう分かって、僕は走るのを止めた





絶望したその瞬間、ふと声がする。僕の名前を呼ぶ最愛の君達の声が


一筋の光が漏れた

その光を目指し、僕は弾かれた様にそちらに向かって走り出した


光はどんどん大きくなり、ついに光の発信源に辿り着いた時



僕は暖かい光に包まれた




「…う、ん…?」

「おい、大丈夫か?魘されてたぞ」

「エー、ス…?」

「サッチさまもいるぜ!マルコもオヤジも、みんないる」

「お前が泣くなんて、珍しいない?」


目を開けて起き上がり周りを見渡すと、いつの間にか居た皆が

僕は独りじゃないと分かった瞬間、自然と頬に一筋の涙が伝った

それに笑みを漏らす皆だけど、誰一人馬鹿にしたような笑みじゃなくて


それはまるで、妹を見守るお兄ちゃんの様な瞳



「どんな悪夢を見たか知らねェが…お前は一人じゃねェ。なんたって俺の娘なんだからな」



そう言って笑ったオヤジが酷く優しくて、僕は想いのままにオヤジのその大きな腕に抱きついた





本当は知ってたんだ。僕は独りじゃないって

(20110328)



[ 6/48 ]

*prev next#

戻る

TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -