(棗×蜜柑) 「うわぁ、寒いなぁ」 校舎から出ると、びゅう、と冷たい冬の風が容赦なく吹き付ける。 蜜柑は寒さでかじかむ両手に、はーっと息を吐く。けれどもその息は白く、更に寒々しく思わせる。 「お前、手袋ねぇの?」 「あー、うん」 こんな寒い日に手袋を忘れるのだろうか。棗は不思議そうな顔をする。 「…いや、昼休みに雪ダルマ作っててん。やから濡れてしもたんや」 「そんなことだろうと思った」 苦笑する棗の顔に、蜜柑も照れ臭そうに笑う。 ふいに棗は左手から手袋をはずすと、蜜柑に差し出す。 「ん」 「へ?」 「つけろよ」 「でも、それじゃ棗が…」 言いかけた時、蜜柑は右手をそっと繋がれる。 「…へへ、あったかいな」 片方にはぶかぶかな手袋、片方には手の温もり。 寒くて辛い冬の日も、それだけであたたかい気持ちになれる。 Winter Hot 10/04/25 |