「蜜柑、これいる?」

そう言って蛍が差し出したのは一枚の写真だった。

「?なんの写真?」

「フフフ…」

蜜柑は受けとってペラリと表を見る。

「あわわわわわわ!!!!ちょ、ほた、コレッ!」

蜜柑は、見た瞬間に理解不能な言葉を放ち、動揺する。
その写真に写っていたのは蜜柑の好きな彼の、寝顔だった。

「ななな、なんてレアな…!」

「欲しいの?欲しくないの?」

「欲しいです!」

蛍はにやり、と笑う。黒い、笑みだ。

「500円。」

「へっ?」

「タダなわけないでしょ?レアなんだから。

…で、どうするの?」

「た、高くないか…?」

「あら、妥当なところよ。別に強要はしないわ。他でもいくらでも売れるんだから」

蜜柑は悩んだ。500円は自分にとって大きい。…でも、欲しい。

彼の寝顔なんて滅多に見られない。授業中や休み時間に、漫画を顔に載せて寝ている。
漫画をどけようと試みたことは
何度もあった。だけど、敏感な彼には気づかれてしまうのだ。


「…買います」

「まいどありー」



彼の寝顔写真をゲットした蜜柑は上機嫌で自分の席に戻る。
ふと隣を見てみると、

「!!」

写真と同じ人物が、同じ表情をしているではないか。

「なっ、なつめーっ!」

思わず、大声を出してしまう。ハッとして、起きるな起きるなと願うが、彼の目がゆっくり開く。

「………なんだよ」

「あ、なんでもないです、スミマセン…」


写真の中の彼よりも実物の方がいいに決まっている。
ちょと、損した気分になった蜜柑だった。


トキメキ110%
(隣の貴方にドキドキだ!)



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