+Prologue はぁはぁと荒い呼吸をして学園に戻ると、ペルソナが待ち構えていた。 「どうした、蜜柑」 「なんでも、あらへん…」 動揺していることに気づかれぬよう蜜柑は自分を取り繕った。 自分の部屋に戻ると、胸をおさえる。 まさか、棗の母親に出会うなんて思ってもいなかった。彼とそっくりな容姿と、強い瞳。 ―すべてに引き込まれそうになった。 “後悔やって、してるんやろ?” そう言われて、胸を刺されたみたいにズキズキと苦しくなった。 棗が幸せならそれでいい、そう思ってた。後悔なんてしないと思ってた。 …だけど、違った。そんなふうに思えるほど、大人じゃなかった。 自分の隣で幸せを感じてほしかった。笑っていてほしかった。ずっと一緒にいたかった。 こんな後悔、もう遅いのに。 自分がしたことは本当に正しかったのか、それすらわからなくなってしまった。 窓から差し込む月明かりは優しすぎて、弱すぎて、心まで差し込むことはない。 蜜柑は願わずにはいられなかった。夢の中だっていいから、どうか、もう一度だけ彼に逢わせてください、と。 |