(棗×蜜柑)


「今回のテストは全滅や…」

期末試験最後の科目、国語のテストが終わると蜜柑はうなだれる。
ひどく落ち込んでいるようだ。

「…今回のテストも、だろ」

異常なほどに落ち込んでいるので、俺は仕方なく言葉を返す。
すると蜜柑はキッと鋭く睨んでくる。
蜜柑のテスト結果が悪いのはいつものことで。正直に言っただけだ。
だけど蜜柑にだって得意教科の一つや二つ(いや、一つだけだが)ある。
その国語にも期待ができないのだろう。

「今回難しすぎやわ鳴海先生…。棗、書けた?」

「白紙。」

「あー…、そっかー…」

自分に言わせれば、鳴海のテストが一番厄介で難しい。
点数をとろうと本気で書いてもおそらく満点はとれないだろう。
蜜柑は国語が得意というよりは、むしろ鳴海の作るテストが得意なのだ。

“あなたは何のために学園に来たのでしょう?400字以上、今学期に習った漢字、比喩を使って書いてください。”

これが今回の問題だった。後にも先にも問題はない、これだけだ。
語尾にはいちいちしつこいほどにハートマークがついていた。
見た瞬間に書く気も失せてしまう。毎回鳴海のテストは白紙で提出する。今回も同じだった。
…ただ、その“問題”をテスト時間中ずっとぼんやりと頭の中で考えていた。
そして行き着いた答えが一つあった。



「何のために、学園に…」

蜜柑は呟いて、う〜んと悩む。
テストが終わった今考えても意味がないことだが、答えが出ないのはスッキリしないのだろう。
しばらくすると目が合って、蜜柑はぱちくりと瞬きする。

「…そっか……そうや」

「なんだよ」

一人納得した様子の蜜柑に問い掛ける。本人は真顔だ。

「ウチは、棗と出会うためにここに来たんや…」

そんな言葉を聞いて、思わず口元が緩んでしまう。
その笑みの本当の意味に気づかず勘違いした彼女は顔を真っ赤にする。

「わ、笑った!?ウチは真剣に考えたのに……アホ!もうええっ今のなし!」

怒ったような恥ずかしそうな、そんな蜜柑の様子を見て、また笑ってしまいそうになる。
絶対に絶対に言ってやらない。俺も同じこと思った、なんてな。




君と出会うために此処にきた



11/02/08


発掘品を編集しただけなので、なんとも……。
出会えたことは奇跡で、それだけで意味のあることだなぁとか臭いことを言ってみたり。
お粗末様でした。








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