(のばら+棗→蜜柑)


「…ねぇ、棗君……」

昼休み、特力系の生徒は会議のため徴収された。
教師はまだ来ておらず、教室はガヤガヤと騒がしい。
そんな中、のばらはおずおずと棗に話しかける。話しかけられた棗は面倒くさそうな顔をする。

「蜜柑ちゃんって、魔法使いみたいだね」

「…はあ?」

しかし、その突拍子もない言葉に棗は思わず言葉を返してしまう。

「なんで。あいつのどこが」

ドジでお節介で要領の悪い蜜柑。そんな彼女のどのあたりが“魔法使いみたい”なのか。
そう頭の中で考えていると、棗は無意識にフッと笑ってしまう。

「……ほら」

「は?」

「蜜柑ちゃんはみんなを楽しい気持ちに、嬉しい気持ちにさせてくれる。
私は蜜柑ちゃんに出会って、孤独を感じなくなったもの。棗君も……そうでしょう?」

学園(ここ)に来て、いつのまにか他人を信じられなくなっていた。
親友である琉架以外に、自分を理解してくれる人などいないと線を引いていた。
しかし、目の前にいきなり現れた彼女はいつだって明るく、ヘコたれなかった。
そんな彼女と接するうちに、自分の荒んだ心が癒されてゆくように感じるようになった。



「……そうかもな」

そう答えた棗は、自分では気づいていなかったが、学園に来てからは
誰にも見せたことがないような、穏やかな笑みを浮かべていた。



10/09/03









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