夕日が眩しいと妙は目を細めた。しかし細めた理由はきっとそれだけではないだろうとおりょうは思う。

いつもの白衣を脱いだ銀八がだらだらと歩いていた。どうして歩くという行為だけであんなに気だるくできるのだろう、ある意味凄い。銀髪が夕日に染められて紅い。妙は目を細めてそれを眺めていた。


「行きましょう」


ふいに妙が言い放った言葉に我に帰る。妙はすでに窓を背にカバンを掴んでいた。ごめんなさいね、遅くまで付き合ってもらって。申し訳なさそうに笑う妙にいいのよと返す。先生に頼まれたという書類の整理の助太刀に来ていたのだ。大変ねと同情したら妙は全然と笑った。それは困った笑みではなく本当に全然という笑い。それを見た時もしかしたらと思った。もしかしたら頼んだのは奴かもしれないと。

いったいいつからだろう。聞いてはいけない気がしてずっと胸の内にしまっている。おりょうは妙に倣ってカバンを手にした。妙はすでに教室の扉近くにいる。何となく、もう一度窓の外の景色を見やる。そこには件の担任、そしてその隣にはピンク頭の留学生がいた。いつのまに。そういえば仲良いよなあの二人。雰囲気が先生と生徒というだけの関係ではない気がする。醸し出す空気が違うように見えた。そう、例えば恋人同士とか。あり得ないと思いつつこちらも見てはいけない気がしてすぐに目を反らす。反らした視線の先には妙が静かに笑っていた。
妙は何も言わない、故に私も何も言えない。ああもう、あの天パをぐしゃぐしゃにしてやりたい。いつの日か相談でも報告でもいい、妙が何かを言ってくれるのを待つしかなかった。









100809再録
080607





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