今日はいつもよりどこか機嫌が良い。そんな妙は弟の新八に何気なく話かけた。


「ねえ新ちゃん」

「何ですか?」

「名前何がいいと思う?」

「へ?」

「だから名前よ、名前」

「え…名前って何のですか?」

「赤ちゃんの」


その言い方はさりげなく、しかし嬉しそうな顔を見せる妙。ついでにその手はお腹を押さえていた。
その様子に新八は硬直。そして絶叫。


「ギャアァァァ!!」


「うるさいアル、新八」

「だっ!!だっ、え、えええ!今、あか、あかあか!」


慌ててソファーから立ち上がり妙を凝視する新八。神楽はその様子をどこか冷静に眺め突っ込む。


「ちゃんと喋れヨ。これだから新八は。銀ちゃんもお茶吹き出すな」


神楽の言うとおり、新八の叫び声にかき消されながらも銀時は盛大に口の中のお茶を吹き出したのだ。見事にびちゃびちゃになったテーブルの上を、定春が嬉しそうに舐める。
そんなことは目に入らない新八は妙に対して両手を無意味に動かし始めた。それは水に溺れているような動きにも大きく手を振っているようにも見える。


「ああ姉上!い、今、あか、赤ちゃんって!」

「ええ」

「ええ!?そそのお腹がえうあああ!」

「?」


パニックになる新八をよそに銀時は未だ手に湯呑みを持ったままソファーの上で固まる。定春はちょうど机を綺麗に舐め終えていた。そんな定春を撫でながら銀時を見る神楽と、やはり幸せそうな妙。


「銀ちゃーん」

「…あ?」

「銀ちゃん汗だらだらヨ。冷や汗言うやつか?」

「ううるせェェ!」

「煩いのは銀ちゃんネ」

「ちげェェよ!それはナイ!」

「姉上ェェ!ほんとですよ!それはないですよ!」

「つーかよく考えてみろ神楽!」

「何だヨ」

「だってほらアレじゃん?アレアレ!」

「アレじゃわかんないアル」

「あれですよ姉上!きっとそれはあれです!!」

「新ちゃん?何言ってるの?」

「えええ嘘ォォ!姉上ェェ、嘘と言ってェェ!」

「だってほらあれじゃん?つーかそうだよ!」

「銀ちゃんも新八も煩いアル」

「そうだよ!つーかキスで赤ちゃんができるけねェだろ!な、神楽!」

「そうですよ姉上!キスで赤ちゃんができるわけ……。…え?」

「……え?」

「え…」

「……」

「…あれ、できるっけ?」



新八、またしても硬直。そして二度目の絶叫。


「この腐れ天パァァァ!!それどういう意味だァァ!!」






ある日の断片
(ちょっと、猫の赤ちゃんの話よ?)
(……え?)
(でも姉上、お腹に手を…)
(あら、そうだったの?)
((……))
(バカな男たちネ)






080428





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