ありがたい日の温もりを感じる午後の一時。
部屋の中でも光の差し込む暖かい場所へ妙はそっと座った。
反射して光る銀髪を静かに撫でるも反応はなし。堪らずその大きな手に触れそのままそっと掴んだ。
貴方がどれだけ強いかなんて知らないわ。
貴方がどれだけの過去を背負ってるかなんて知らないわ。
ひどく見えずらい想いを抱えて貴方は今どこへ向かいたいの。そこに私はいるのでしょうか。
掴んだ手を今度はぎゅっと力を入れると、ようやく気が付いたのかぼんやりと自分を見る瞳が覗いた。
「あー…お妙…?」
「そうですよ」
「……俺寝てた?」
「寝てました」
見上げる銀色の男はどこかまだ夢見心地のようで、そうかと低く呟いた。
「つーか…どうしたんですか?」
「何がですか?」
「手」
銀時は繋がれているほうの手を軽く持ち上げる。
「何これ、出血大サービス的な?」
銀さん嬉しいなー、なんて棒読みで言われても嬉しくない。
すぐに「違います」と妙は言った。
「うなされてたから。銀さん」
「……マジか」
「嫌な夢見てるのかと思って」
「……」
「変な時間に寝るからですよ」
「…いや、気持ちよくて」
寝る気はなかったんだよ、と続けながら銀時は体を起こした。
「…どうしたんですか?」
繋がれた手をじっと見つめる銀時の顔を不思議に思い妙はそう尋ねた。
いまだ夢見心地なのか、何も答えないその男の瞳を覗く。
つらそうに苦しそうに顔を歪めて 泣きそうに声を出して、いったい何を見てきたのだろう。
その瞳に今は映っているのだろうか。
「銀さん」
「…あ?」
「大きな手ですね」
そして無骨な手。
抱えてるものも多いのかしらね。
「…お前がちっせえんだろ」
「そうかしら?案外大きいかもしれませんよ」
そう言うと銀時は少し驚いた表情をし、それからため息にも似た笑みを零した。
――まったく…私にはなんにもくれないのね
それでも、離そうとしない手と手に少し嬉しくなる。
銀時は起こしていた体を再び横にし目を閉じた。
「銀さん?」
「あァ?」
「また寝たら変な夢見ますよ」
「…かもな」
銀時は静かにそう言うと、繋がれていない方の手を妙の頬にすっとそえ、一瞬、唇と唇を重ねた。
「……怒んねーの?」
自分からしたくせに驚きつつ聞いてくる銀時に妙は苦笑しながらも「今日は怒りません」と返す。
ぼうっと見上げてくる銀時の表情はどこかまぬけで、でもどこか寂しそうである。
「何か…今日変だな…お前」
再び目を閉じ ゆっくりと言葉が紡がれた。安堵感の含んだそれに「あら、それはこっちのセリフですよ」と返してやった。
笑ってごまかす
また貴方は小さく笑う
080302