特攻隊弓士プロット+α



2010/10/29 18:18
1945/05
■5月中旬■
「士郎さんはアレに乗らんのか?」
「俺は操縦士の資格がないんだ」
「でもアーチャーさんが前に、士郎さんが予科練に入ったと言うて喜んどったぞ」
「今の俺は……ただの二等整備兵曹だよ」
「そうか。士郎さんの仕事は兵隊さんたちを見送るのに欠かせんのう!」
「ああ。俺たちが仕事をしなきゃ、誰も戦場へ行く事は出来ないんだ」
ぐるぐる考える士郎を気にしてか、雷画はニヤリと笑って話を変える。
「そういえば士郎さん、士郎さんは女は知っとるか?」
「お…おんな!?」
「その様子じゃまだみたいじゃの。海軍の軍人さんなら夜遊びもお手の物かと思っとったが、ぜんぜん遊ぶ雰囲気もなし、かといって将校さんのお手付き言う雰囲気でもなし」
「雷画くん……」
「衛宮のお人はみんな色事にはカタブツじゃの」
「え……?」
「ここの旦那も前の嫁さまを亡くしてから一人身じゃ。それにアーチャーさんも全然女遊びしとらんしの」
「……なんでアーチャーの事まで知ってるんだ?」
そんなことまで話す仲なのかと訝しむ士郎に雷画は呆れ顔で言葉を返す。
「うちがやくざ者だと知らんのか?」
「いや、それは……」
「冬木の娼妓や芸者には大抵うちの息がかかっとる、そこらの密偵より軍人さんのシモの事には詳しいがな。アーチャーさんといえば、色男なのに女に見向きもせんで、男色の気が……」
「おいおい、そこまでにしておけよ雷画少年。あまり聞き捨てならんことを吹聴するようなら、軍の尋問に付き合ってもらうことになる」
「そりゃあ恐い」
アーチャーが話に割って入ったことで気まずい思いをする士郎だが、アーチャーは気にせず雷画と話す、それが面白くない士郎はその場を立ち去る。
屋敷の女中にアイロンはあるかと尋ねるとあると言うのでそれを借り、皺くちゃになった制服にアイロンをかけることに専念した。
海軍士官ともなれば芸者遊びの一つや二つして当たり前、先日やってきた少尉は最初の休日に薄給にも関わらず見栄を張って芸者を連れて映画館へ行ったという。
士官は娼妓と遊ぶことが禁じられている為、高い芸者相手とはなるが、浪費癖の無いアーチャーが中尉の給料の内から女遊びの用金が出せないほどではないだろう。
男色の気、という言葉に体内のまだ若い少年飛行兵を幾人か想い浮かべて落ち込む士郎、あやうくアイロンでズボンを焦がしかけてため息。


<新古>


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