寝起きの体は石が乗っかっていると錯覚してしまいそうなほど重い。天気は良いのに、光の入ってこない部屋の中は薄着で寝て過ごしていた俺にとっては少し肌寒かった。動くのはひどく億劫だったが起きたのだから動かなければならない。鉛のように重い体を引きずりながら太陽が照っている外へと向いた。
「(眩しい…)」
縁側に行くと久しぶりの日光が歓迎しているのかしていないのかぎらりと照っていて、眩ませた。
「あ、おはよう」
「…おはよう」
先に縁側にいたらしい六合は俺に気付いて笑いかけてくる。俺の声が低いのは寝起きだからで六合はそのことを知っているから何も言わない。
「座らないの?」
「いや…」
ぼう、としていると六合が小首を傾げて聞いてくる。太陽の光と匂いが染み込んだ縁側に腰を下ろした。最初、体は冷たかったがじわじわと足の先から温かくなっていく。眩んでいた視界も光に慣れていき目をはっきりと開けられるようになった。
「相変わらず、顔色悪いね」
「余計なお世話だよ」
話は変わるが、俺は六合のことが好きらしい(ひどく曖昧ではあるが、普段から彼を目で追い掛けていた。その旨を暈しながら煤竹相手に呟いてみると恋じゃないんすか、と返ってきたというわけだ)。そう、自覚したらしたらで前より六合を変に意識し始めたわけだが(平静を装っているつもりだが)。
「六合の、」
「んんー? どしたの?」
「もしもの話をしようか。――誰か――女にしよう。その女が君のことを好きだって言ったらどうする?」
生ぬるい風が吹く。俺の、六合の髪を揺らして遊ぶ。六合はぱちくりと瞬きを繰り返す。少し考えているようだった。
「その場しのぎで好きって言うよ。女の子は泣かせたくないからね」
「それが恋愛感情が入っていたとしても…?」
「俺がその人のことを好きだったらね。その時はちゃんと返事をするよ。けど、そう簡単に好きって言われたくないかな。だって、ほとんど知らないんだよ。一目惚れはあるって言うけど俺は信じてないよ。話して趣味が合った方が楽しいでしょ。一目惚れして実際話してみたら趣味が違ってたりとか嫌でしょ。男はそれに合わせることができるけど女の子からしたら嫌だと思うな…」
「じゃあ――俺がもし君のこと好きって言ったら君はどうする?」
「梵天が? どうしたの、今日は饒舌だね。いつもの梵天じゃないみたい。俺は嫌いじゃないよ。梵天のこと。顔色悪そうだし、まだ寝てなよ。それじゃあね」
六合の幼げな背中を見送りながら俺は溜め息を吐く。太陽はぎらぎらと照りつける。少し暑くなってきた。
「(嫌いじゃないよ、か)」
恋は遠い。果てしなく遠い。俺が彼を好きなのも彼が俺を好きになるのも、果てしなく遠く、見えない壁に遮られてしまって。
光に当たっていた足は人のように温かかった。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -