本棚が密集した、広い部屋のはずなのに本棚に入り切らない本や資料の紙が散乱していて人が立つスペースはほとんどない。
「なあ、」
「何」
書物や資料でごった返している机の方から九十九屋から俺に声が掛かる。本棚に詰められている分厚い古ぼけた本を両手で抱え、九十九屋を見ることなく、素っ気なく答えた。
「お前ってフォークダンス出来たっけ?」
「は?」
足の踏み場がほとんどない部屋で(少しでも踏み場が出来るように紙媒体を隅へ追いやったのだがそれでも狭く感じた)手と手を取り合い、体を密着させる。
狭い。本当に狭い。足をちょっと動かすだけでも九十九屋の大事にしている書類を踏んでしまうかも分からない。慎重に。しかし、タイミングが思うようにうまく合わず俺は九十九屋の足を何度か踏んだ。
「足、踏むなよ」
「うるさい」
ぎゅう、と九十九屋の手を掴み限られた空間の中でステップを踏む。最初は九十九屋の足を踏んでいたのも、いつの間にか踏まなくなった。
「飲み込み早いな」
「九十九屋、うるさい」
「そんなかりかりするなよ。褒めてるのに」
「お前に褒められても、嬉しくないね。というか何でフォークダンスなわけ? 意味分からないんだけど」
九十九屋は自分の指と俺の指を絡ませ遊びながらうーん、と呟く。
「世界が終わる前にお前と踊りたかった」


2010xxx

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