WARNING!
このおはなしはスコールさんがおにゃのこになってしまうおはなしです。そういったものがにがてなひとはいますぐひきかえしてください。
それでもいいですとも!なかたのみおすすみください。




































(何故……)























こうなった。
心の中でささやかなツッコミをしてから、スコールは激しくうなだれた。朝、起きてすぐのことだった。今日はクリスタルの散策もせず、カオスの陣地に乗り込むこともせず、たまには一日オフにしようと提案したのは自由な旅人バッツの発言によるものだった。皆旅の疲れも溜まっており、たまには羽を伸ばすのも良いだろうとウォルの見解もあり朝の支度はいつもより遅かった。昨日の夜にバッツと交代で見張りを行っていた為、スコールは朝起きるのがいつもより遅く、また同じテントのメンバーであるジタンやティーダ、クラウドは先に起きて外にいるようだった。此処に誰も居ないのが唯一の救いだ、とまた吐いても仕様がないため息を吐いて、スコールは胸元を見る。

ふにょ。

柔らかい何かがそこにあった。女性の象徴でもある、柔らかい胸。豊満、とまではいかないが、小振りながらにしっかりとそこにはあった。そして下半身の中心。あるべき筈のものがない。どうしてこうなってしまったのか訳も解らなくて泣きたい気持ちでいっぱいだった。思い当たる節も特にない。何故自分がこんな目に…何よりほかの奴らに何と言ったら良いのか。頭がぐるぐると回って、普段冷静な思考回路が今は全く働かない。しかし時間的にもそろそろ起きないとまずい。このままでは誰かが起こしに来るかもしれない。
(嗚呼…ほんと、どうしたら…)
「スコールの奴まだ寝てるんスか?早く起きないと朝飯食いっぱぐれるのに」
「仕様がないさ、昨日はバッツと交代で見張りやっててくれたんだしな。まぁ一つ悪戯でも仕掛けて起こしてやろうぜ」
外から聞こえるジタンとティーダの声。まずい!と更に焦りが募る。このまま寝たフリでもしていようそうしよう!冷静ではないパニックに陥った思考は直ぐさま行動に起こし、スコールはもう一度寝袋に身を隠し入れた。出来るだけ女だとばれないように寝袋のジッパーを極限まで上げる。そうしてほぼ俯せになるように狸寝入りの準備が終わるのと同時に二人は入ってきた。
「おーいスコール〜起きろ〜今日の飯はセシルの担当だぞ〜?美味いぞ〜?」
「起きないと、」
内心ごく、と唾を飲み込む。起きないと、どうなるのだろう。スコールはとりあえず黙ったまま。目も開けず、二人からは見えない位置で固唾を飲み込んだ。
「起きないと、こうだっ!!」
「っ!?」
がばっ!とジタンとティーダがいっぺんにスコールの身体へと覆い被さる。その衝撃に息が詰まった。しかし寝袋に収まっている両手は身動きが取れず暴れることもできない。そう思っているとティーダが手際よくジッパーを開けはじめた。
「お、おい、ティーダッ!」
「はよーっス、スコール!よく寝れたっスか?さ、早く起きて飯食うっスよ!食ったらみんなでブリッツやろう…ぜ?」
ティーダが固まった。ついでにスコールも固まった。ジッパーが開けられた先にティーダの視線が釘付けだった。足元を押さえていたジタンはそんなティーダの後ろ姿に小首を傾げどいした?と近づく。
「スコール、お前ずいぶん美人になったな…!」
(感心されても嬉しくない…)
よりによって朝から面倒な奴らに見つかったと思い、スコールはまた泣きたい気持ちになった。
























とりあえず、腹を括りたくなかったが朝飯を食えと二人から催促されたのでみんなの前にお披露目になった。皆スコールの麗しい姿を見るなり絶句。反応は様々。
「あまり変わらないな」
何処までも冷静なウォル。
「ごくっ…!」
元は男だと解っていても純情なフリオニールには目の毒らしい。
「前より更に鋭利な印象になったね」
褒めてるのかけなしているのか解らないオニオン。
「とりあえず、肌けた胸元は隠した方が良いんじゃないかな?」
のほほんとしながらも困った顔で笑うセシル。
「やっぱりスコールは女になっても美人だな!」
相変わらず空気を読んでいないバッツ。
「あの…後で、お化粧してもいいかな…?」
微かに頬を赤らめながらひそやかに言ってくるティナ。
「…服に困ったら俺の装備を貸してやる」
心底哀れみをこめた目で言うクラウド。
「バッツに同意する訳じゃねぇけどさ、スコールは女でもいけると思うぜ」
だがしかしどこかやはり哀れみをこめた眼差しで見つめてくるジタン。
「女になっても、俺より身長高いんスね…」
突っ込み所が最早違っているティーダ。
嗚呼、ほんとうにいっそ死にたい。モルボルの臭い息にまみれた方がまだマシだと思えるくらい、羞恥心に押し潰されそうだった。
「とりあえず、何でそうなったのか心当たりはあるのかい?」
セシルがスコールにそう問うと、スコールは力無く左右に首を振った。ぽり、とセシルが頬を掻く。とにかく初めての事態に、仲間の誰もが言葉を失い、対応に困った。見た目は派手だが中身は地味なスコールの纏う雰囲気は、今にもハーデスを召喚しそうなくらいに近寄りがたく暗いじめっとしている。とりあえず、と口を開いたのは、意外なことにティーダだった。
「放っておきゃ治るんじゃないっスかね?」
原因も解らない以上、確かにこれ以上考えていても始まらない。
考えるよりもまず行動に起こすティーダらしい発言に皆は満場一致し、そのあとは蜘蛛の子を散らすように散っていった。しかしティーダはまだ残っていた。すっかり暗くなったスコールの腕を引き、ティーダは微笑を浮かべる。
「スコール、ちょっと良いっスか?」
「…?」
訳も解らず、ティーダに手を引かれるままスコールは着いて行った。



* * * *



連れて来られたのは森の奥。人を寄せつけない茂みに、二人は居た。目の前の泉は透き通っていて、魚も悠々と泳いでいる。そんな綺麗な景色は、今のスコールには全然写っていなかった。
(これから、どうしよう…)
ティーダとは、所謂恋仲のようなものだった。こうして人気のない所に二人で忍んで行ってそういった行為もしたことがある。そして何よりティーダはスコールに酷く懐いていた。犬が飼い主にべったりなように、真っ直ぐな愛情をスコールに与えてくれた。
これからどんな風にティーダに接したら良いのかすらも、最早解らない。ぐす、と膝に顔を埋めながら鼻を啜る。視界が暗くなると、余計に考えることはネガティブな方向ばかりだった。
「スコール、」
名を呼ばれた。同時に、くいくいと袖を引っ張られる。放って置いてくれ、女になった自分なぞ気持ち悪いだけだ。しかし手を払いのけることはできなかった。何故ならティーダの方から無理矢理握ってきたのだ。その温かみと熱さと力強さに、思わず胸が高鳴った。
「大丈夫」
顔を上げれば、ティーダが青空色の瞳をまっすぐにスコールへと向けていた。
「俺が、スコールのこと守ってやるから」
「……余計に不安だ」
「ええええ!?」
一世一代の告白なのに〜、とティーダはあたふたしながら喚いている。だが、今の台詞は正直キた。何だかよく解らないが胸がキュン、となった。これが所謂、
「スコール…?」
母性本能、というやつなんだろうか。大きな丸い瞳は以前よりも2割増に可愛く見えて仕方がない。とりあえず欲求のままにティーダを抱きしめた。うわっ!とティーダが驚いている。
「ちょ、スコール…!ムネ、胸が顔に当たってる…!」
「喚くな、黙れ」
女になっても声の鋭さは健在らしく、ティーダはぴっ、と固まって動かなくなった。とりあえずヒヨコのような頭をひとしきり撫でて、匂いを吸い込む。嗚呼、ティーダの匂いだ、と落ち着いていく。どぎまぎしてるティーダが怯えた子犬のようで、それにまたくすりと笑みが浮かんだ。
「スコール、その笑い方何かエロい」
「だから、黙れ」
更に胸元に抱きしめてやると、ティーダは更に身体を強張らせた。女はこんなふうに、恋人を腕の中に抱き留めるのだと思うと、何となくうらやましかった。何がどううらやましいのかうまくは云えないが、けれども言葉にはできないが女にしかできないことというのはこういうことをいうのかもしれないと、やっと冷静になってきた頭でそう思う。女だからといって、そこまで悲観しなくとも良いかもしれない。そう少しだけ思えたのはティーダのおかげだ。だが、
「お前は、俺が守る」
「え…?」
「俺が女だろうが男だろうが、関係ない。お前を愛してるからこそ、俺がお前を守る」
「…何か、女に言われるのすっげー癪なんスけど」
「俺は俺だ。男だろうが女だろうが関係ない。何なら、」
とさ。腕の中に閉じ込めていたティーダを、草の上に押し倒す。すると、ティーダは顔を赤らめた。
「ちょ、えっ…!?」
「試しに、一回シてみるか?どっちが上なのか、をな…」
更に赤らめるティーダがまた可愛く見えて、目尻にキスを送れば。あの熱い掌、スコールの背中へと回された。






























「にしても、驚いたな〜。スコールって女になっても違和感ないな」
「んっふっふ。目論み成功だぜ」
「?バッツ、それ何だ?」
「変化の粉だよ。ほら、これって物質を変化させる性質があるだろ?ものは試しでさ、誰かもう一人女の子増やせないかなーと思って。でも、クラウドじゃちょっと骨太過ぎるかなって思うし、セシルもあれでいて結構マッチョだからな。そこで、一番違和感なさそうなスコールに、ちょいちょいっと使ってみたって訳だ」
「…いつの間に……」
「昨日の見張り俺とスコールだったろ?お疲れさん、て言って手渡したポーションにこっそり仕込んでおいた!」
「可哀相にな、スコールの奴…」
「何だよ〜ジタンだってノってたじゃないか!それにほら、一時的とはいえ目と心の保養にはなっただろ?」
「ま、まぁ…(スコール、ごめん…お前はクラウドに負けじと美人だぜ…)」
「次は誰にやってみようかな〜ジタンは誰が見てみたい?」
「とりあえずさ、ほどほどにしとけよ…(話を聞いた時点で俺も共犯なのかな…)」



























どうしてこうなった
(そうしてこうなった)



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