現パロ。ノマカプ要素有。








































「うわー小っちぇー」






























ぷに、とてのひらには有り余るほどの大きさしかない小さな小さな手を優しく掴みながら、ティーダは笑った。俺の腕の中に居るのは、つい先日産まれたばかりの息子だった。わざわざ出産祝いを持ってきてくれたティーダと俺に気を遣って、リノアはせっかくだから散歩がてら話してきたらと勧めてくれた。腕の中の息子は、自分が初めて異性で好きだと思えた女性に、よく似ていた。黒くて丸い目が俺を捕らえ、手足を無造作に動かしている様は何ともいじらしい。
ティーダは相変わらず、俺の腕の中にいる子供の手を摘みながら、嬉しそうに顔を緩めていた。
「スコールが父親になるってきいた時は、大丈夫かよ、って内心思ったけど、」
失礼だなとは思ったが俺もそれは思った。自分なぞが父親なんていうものになれるのか、子供ができたと彼女の口から聞いた時は思わず箸を落としご飯を落としたほどだ。昔と変わらず純粋なティーダの意見に半分頷くと、尚もティーダは続けた。
「けど、良かったっスね!」
おめでとう!と、心からの笑顔に、何故か胸が締め付けられた。息子はせわしなく目をキョロキョロさせて、ティーダ目掛けてもう一度手を伸ばす。それに気付いたティーダが屈んで、息子に顔を近づける。前髪の一部を、ぎゅ、と息子が掴んだ。遠慮なく引っ張られていたたたた、と言う割には顔は笑顔だ。その様子を、俺はどこかぼんやりとした調子で見つめている。
「スコール?」
何も喋らない俺を疑問に思ったのか、ティーダが上目に俺を見上げる。昔、今より若い時分に俺はティーダと付き合っていた。互いに若かった、そう云えばそれまでだが、俺なりにティーダを愛していた。だが、同性同士は何も生み出さない。非生産的な背徳行為を繰り返した結果、俺たちは分かれて、別々の道を歩み出した。今は、互いに守るべき人が居る。ティーダが今付き合っている女性も、もうすぐ産まれるのだと、ティーダ自身から聞いていた。
互いに納得して、ぶつかり合って、くじけそうになっても、それなりに支え合って、今のこの道が在る。これで良い。そう自分に言い聞かせてきた。事実、これで良いんだと思う。けれども、心の奥底では未だに何かが引っ掛かっている。どんな顔をしていたのか、自分じゃよく解らないが、いつのまにか耽っていたらしい。ティーダは溜息を吐きながら、俺の頬をぶに、と摘んだ。
「まーたウジウジ悩んでるっスか?」
「……痛い」
「スコール、」
俺を呼んでくれるティーダの声。相変わらず、変わらない。この声が好きだ。その気持ちも、変わらない。
「そんな悲しい顔、しないで」
つう、と。鼻の先がつんとするのを感じながら、頬にも何かが流れていった。嗚呼そうか、俺は悲しいんだ。ティーダを裏切ってしまったのではないか、ずっとそう思っていた。ティーダに思い人ができたと報告を受けた時も、胸が痛んだ。だからといって自棄になりながらリノアと付き合った訳ではないし、寧ろリノアは初めて異性で好きだと思えた人だったから、付き合ったのだ。こうしてリノアとの間に子供が欲しいと思えたのも、リノアを想うからこそだと思っている。けれども、それでも、自分はティーダへの想いを捨てきれないでいる。自分のこの想いが空回っているような気がして、だからか時々リノアと居ても満たされない瞬間がある。俺は、最低だと思う。それでいて一人苦しがっているのだって、お門違いもいいところだ。
だがティーダは、そんな俺の心中なぞ見透かしたかのように尚も穏やかに笑って、息子の手をもう一度握った。
「俺は、嬉しいよ」
ぽつりぽつりと静かに話しはじめるティーダの声音はひどく穏やかで、縋りたくなる。
「スコールの息子とこうして握手できて、こんにちはって言えることができて、嬉しいよ。そんで、この子がスゲー愛しいって思う。小っちぇー手で俺の指、力いっぱい掴んでくれて。丸くて大きな目で俺を捕らえようとして、これが命なんだなーって、そう思う」
そうして、あまり毛がない息子の頭をそっと撫でて、青空の瞳が俺を映す。以前より大人っぽくなった顔立ちに、少し鼓動が高鳴った。
「俺は、今でもスコールのことが好きだ」
「っ、」
想いが、溢れる。息子を抱きながら、僅かに低いティーダの肩に顔を埋めた。ティーダの日向の匂いを鼻いっぱいに吸い込んで、ぽん、と子供をあやすように背を撫でられた。また、鼻の先がつんと痛む。うー、と息子が唸ったのに気付いて、慌てて離れる。小さな手が、手持ち無沙汰に動く。そうして、俺のペンダントヘッドを掴むと、俺の顔をじっと見つめてきた。またその視線に泣きそうになって、誤魔化すように、額へキスを送った。ティーダが、また笑う。
「スコール」
「?」
「幸せに、なれよ」
また、言葉が詰まった。お前もな、と返そうとしてうまく言えたかは、定かではなかった。























* * * * * * * *



















「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」























スコールのとこの子供が産まれたのがつい先日と感じるくらい、月日の流れはあっという間というもので、今度は俺の娘が誕生した。助産婦さんにそう言われて手渡されたのは、約3000gほどの小さな女の子だった。受け取る時、何度も消毒した手をもう一度服の上から擦って、震えながら受けとった。その時の重みは、羽のように軽く感じて、とても頼りなかった。けれども頭部はしっかりと詰まってるという感じがして重いし、服越しに伝わる体温は本物で、これが赤ん坊なんだって思うだけで、何かが込み上げてきた。
思わずユウナを見つめると、少し血の気が引いたような疲れた顔だったが、達成感に満たされた笑顔で、大きく頷いてくれた。そのユウナの笑顔に、自然と涙腺が決壊した。娘と呼べる小さな小さなこの子は、俺の子供なんだと。そう思うと、胸が暖かさと切なさでいっぱいになった。目を閉じている寝顔はひどく安らかで、でも産まれたばかりの皮膚は真っ赤で、猿みたいにしわくちゃだった。そんなかさついた肌にすら顔の筋肉が緩むのを感じながら、ふと脳裏に浮かんだのはスコールだった。込み上げてくるこの感情は、スコールもこの手で自分の子供を抱いた時に、同じことを思ったのだろうか。だからあの時、複雑な顔をしていたのだろうか。だったとしたら、嬉しいな。
そんなことを思いながら鼻を啜り、ユウナにそっと娘を手渡した。俺があまりに無様な顔を晒すものだから、ユウナはお父さんは泣き虫さんですねー、と楽しそうに言った。ぐず、と啜りながら思う。これで良かった、って。
スコールも俺も、元に戻ろうにも歳を重ねてしまったし、切り捨てることができない絶対のものを抱えたから。何も生み出さないよりも、確かな形を、証を残す。それが、命で、繋がっていく絆なんだと。自分の子供と、ユウナを見て、そう思う。ベッドの縁にに座りユウナの柔らかい肩へともたれる。
「どうしたの?」
「ん、幸せだなーって…」
その言葉に、ユウナが僅かに頬を染める。ピンクの頬が可愛くて、キスしたいって思った。けれど同時に悲しくもあった。スコールとの間に、(仕方がないけれど)何も遺せなかったこと。今は今で良い関係を築いているとは思う。でも今、昔に比べたらずっと大人になった今付き合ったなら、もっともっとより良い関係になれたのではないかと。今と昔を否定する訳じゃない、でも未だにそう思ってるってことは、引きずっている良い証拠だ。
幸せになれよ、とスコールに云った時に涙ぐみながらお前もな、と返してくれた。なぁスコール、俺幸せだよ。スコールと愛し合うことができて、ユウナと一緒になれて、子供ができて。
欲張りなんだな、俺。そこにスコールも居れば良いのにって。またどこかで思ってて、スコールに甘えてるんだ。スコールの傍は、ぬるま湯みたいで気持ちいいから、ずっと浸かりたくなってしまうんだ。
ユウナが小さく、子守唄を歌う。それはどこか、祈りの歌にも聞こえた。心地好い彼女の声に、目を閉じた。それでも、きっと。俺の中の永遠は、スコールだけなんだ。自分の娘とスコールんとこの息子が大きくなって、結婚とかしちゃったら。それこそほんとうに、家族になれる、なんて。
途方もないことを考えてしまった。でもなかなか悪くないアイディアだと思うんだけど、それを聞いたら、スコールはどんな顔するかな。





















ディアマイ太陽
(これが永遠の愛だったら、素敵だね)



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