「君は何故そうも楽天的でいられるのだ?」





















至極真面目な質問だった。私は皆を先導する立場として、常に先を見据え、どんなに過酷な状況でも毅然と振舞っていなければならない義務と責任がある。
それゆえに、パーティーの中でも底抜けな明るさを持つ、ムードメーカーな彼にきいてみた。聞けば、彼の身内がカオスに居るらしいとのこと。そんな状況なのにも関わらず、彼はいつもと変わらない様子で皆と接し、常に明るく振舞っている。私にはあまり感情の起伏がない。特にこの世界にきてからは、明るい感情も暗い感情も、どこかに置いてきてしまったかのような。彼だけでなく彼らを見ているとそんな気さえする。
ブリッツボールと呼ばれる青と白の紋様が描かれた球体をくるくると回しながら、彼は困ったように笑みを浮かべた。
「あー……っと、ごめんウォーリア、突然何なんっスか?」
どうやら唐突過ぎて、彼には話の内容が理解できなかったらしい。私は一から説明した。
すると彼はふむ、と頷き、だがやはり困ったような笑みを浮かべて頭を乱暴に掻く。
「多分さ、俺、ウォーリアとか、オニオンとかみたいに頭良くないし、どっちかっつーと頭より先に身体動いちまうタイプだから、あれこれウダウダ考えるの苦手なんだよな」
「確かに、君はどちらかと言えば口より先に手が出そうだな」
「ひっで。ウォーリアまで俺のこと馬鹿だと思ってるんスか?」
「そういう意味ではないのだが…」
まあいいや、と彼はくすりと得意げに笑んで、球体を小脇に抱える。
「だからってワケじゃないんスけど、あれこれ考えてたってどうしようもないだろ?なるようになる!っていったらアレだけど、でも、そうならないように最低限の努力はするし、もちろんこうなりたい!っていう目標に向かって、後は突っ走るのみっスよ」
「ふむ」
顎に手を当て、それも尤もだ、と頷く。確かに、彼は潔く、良くも悪くも真っ直ぐだ。彼は常々勢いが大事だと、豪語している。それは不安に押し潰されない為の自己防衛だとしても、誰か勢いがあれば皆それについていこうと思うだろう。彼の底抜けの明るさは、パーティー全体に良い影響を及ぼしているといっても過言ではない。
彼が改めてコスモスに召喚された戦士で良かったと再確認すると、私は彼に礼を述べた。
「いいっていいって!困った時はお互い様だしさ!つか、それよりも、」
「何だ?」
「リーダーでも、悩むことってあるんスね」
言われて、私は僅かに目を見開き、彼を見つめる。悩み、か。
「…悩むことはたくさんある。これで本当に良いのか、これは間違っているのではないか。だが私が不安を表に出せば、皆に悪い影響を与える。だから、君の底抜け明るさがどのようなものからくるのか、知りたかったのだ」
「んー、なるほどなあ…」
今度は彼が腕を組み、顎に手を当ててふむふむと真似をするように頷いた。後悔こそしていないが、だが何度も迷ったことは、実際にあった。幾度となくこの戦いを繰り返しているのだ。今でこそやっと吹っ切れているが、その度に迷い、傷つき、そして時には自身の身を滅ぼしかけたこともある。それでも迷いというのは尽きない。戦いが終わらない限り、それは永劫繰り返されるものなのかもしれない。
「でもさ、俺たち、仲間だろ?」
「…!」
彼がはにかむように笑う。それはどこか寂しげな、彼にしては珍しい表情だと思った。
とん、と彼の手が私の心臓に宛がわれた。鎧越しに伝う彼の体温は、ひどく暖かい。
「リーダーだって人間なんだから、迷って当たり前っスよ。そういう時に俺たち仲間が居るんじゃないっスか、だから、もっと俺たちを頼れって!」
彼がどうして真っ直ぐか、なんて疑問そのものが、その時馬鹿馬鹿しく思えた。
彼がどうして真っ直ぐなのか、ではなく、彼そのものが真っ直ぐなのだ。
歪むことなく、今のように私や皆を、仲間を想い、信じているからこそ。
彼はいつまでも明るく、そして煌いていられる。
「…君は、強いな」
「え?いやー、リーダーにはまだまだ敵わないっスよ?」
はは、と苦笑しながらまた頭を掻く仕草は、何とも年相応だ。私にも若かりし頃に、彼のような時代があっただろうか。もうそんなことすらもあやふやでよくは覚えていないけれど、彼は続けてこうも言った。
「それに、ウォーリアだって真っ直ぐっスよ。ぶれないで、俺たちをちゃんと、導いてくれてる。リーダーが居るからこそ、俺たちはちゃんと俺たちで居られるんだと、俺は思うっス!」
にっ、と歯を出して爽やかに笑む彼の背景には、正に太陽がぴったりだと思った。
「じゃあ、俺セシルとクラウドに呼ばれてるからそろそろ行くっスね。たまには誰かに相談してみた方が、気が楽っスよ!」
「ああ、今後はそうするとしよう」
じゃあ、と手を振って彼は去っていく。この世界はだんだん光がなくなってきた。今も尚秩序の声域には暗雲がたちこめている。コスモスの涙を映したかのような静謐の世界。その世界に光を取り戻すことこそ我が使命。故に、どんなに過酷な状況でも、決して諦めてはいけない。
「光よ…我を導きたまえ…」










願わくば彼も、そしても皆のことも。








しばらくして彼とともにはしゃぐ、楽しそうな声を耳にした。
仲間の笑顔があるからこそ、こうして笑い合うことができる。
その笑顔を守る為にも、彼の真っ直ぐさを見習い、私自身も精進していかなければならないのだなと、微かな笑みを自然と浮かべながらそう思った。









WOL+ティダ。兄と弟的な。






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