※現代











「あ、やべ」
帰り道、学年も学校もバラバラな男子学生が四人でつるむとかちょっとアレな光景かもしれないが、その中の唯一の年長者のバッツが突然声をあげた。
「どうしたんだよバッツ?」
金色で、後ろの髪の毛を一つにまとめた姿がトレードマークの、そしてグループ最年少だがしっかり者のジタンが尋ねる。バッツは少しも焦った様子を見せずに、自分の服やカバンを漁りながら、わずかに首を傾げた。
「携帯や財布落としたんスか?」
俺が尋ねると、あはは、と笑うバッツ。
「ああー…何か両方落としたっぽい?」
「……はぁ」
ため息を吐いたのは、俺と同い年のスコール。生徒会副会長もやってて、学年成績トップをずっとキープしてる頭が良いイケメンだ。あ、ちなみに俺とスコールは同じ学校で同じクラスな。
「どこで落としたんだよ?」
とりあえず街中を歩いていたのだが人の邪魔になるといけないので脇に避ける。ジタンは呆れながらバッツに訊けば、やっぱりバッツは笑ったまま。
「うん、ほら、さっきみんなでマックに寄っただろ?で、尻ポケットに財布と携帯をいつも一緒に入れるんだよな。で、入れた時に、ガシャンって何か落ちる物音はいたんだよな。それで、今歩いてたら何か尻ポケット軽くて、触ってみたら、ない、って感じ?」
「…落とした時点で気付け、馬鹿」
と、スコールが地味に突っ込み。バッツのどこか抜けてるのは今に始まったことではないのでもう慣れっこだが、ずっとこの調子ってのも正直迷惑だ。
大体にして巻き込まれんのはいっつも俺たちだし、ほんとにこの人ハタチの成人なんかなって時々思う。
「とにかく、さっきの店戻って店員に訊いてみようぜ」
困った人は放っておけない仲間思いのジタンの提案にみんなで頷いて、とりあえずさっきの店に戻ることにした。





「おかえりー俺の財布と携帯ちゃん!!」
「良かったな、中身取られることなく無事で」
「ほーんと、バッツって運だけは良いッスよねー」
店に戻ったら、気が付いた店員さんがちゃんと預かっててくれたらしく、財布の中身も取られることなく無事なようだった。そう、バッツは何故か昔からくじ運が良い。中高や大学の受験も山勘で合格、しかも大学の専攻学部は薬学部。要領も良いのかちょちょっと勉強すれば大半のことはすぐに頭に入り、テストの出そうな範囲の当たる確率97パーセントとかなりの高確率だ。薬学部って、俺なんか聞いただけで頭痛がしてきそうな学科だ…。
「よーし、俺の財布も無事に戻ってきたし、俺のおごりでみんなでプリクラ撮りに行こうぜー!」
「えー?」
「何だよティーダ、ノリ悪いな〜」
「だって男四人でプリクラってどーよ?」
「可愛いレディたちとだったら喜んで撮るけどな…」
「じゃあアレだ、スコールにヅラ被らせてスカート穿かせれば花ができるだろ?」
「は………?」
今まで無関心だったスコールがものすごい勢いで拒絶を露わにした。この顔は類い希な表情だ。ほとんど無表情なスコールの顔を崩せるバッツの特技は本当に幅広い。
「じゃあけってーい、ゲーセン行こうぜー」
「ちょっと待て、俺は何も言ってなっ…!」
哀れスコール、バッツに捕まったら最後、骨の髄までしゃぶりつくされる。
こうして俺たちは嫌がるスコールにヅラを被せ、スカートはさすがに拒否られて(というか更衣室にみんなで入って無理やり着せようとしたら店員に白い目で見られた上に止められた)とりあえずプリクラを撮った。
みんなの顔が異常なほど白かったり目がデカかったりして誰だこれ!?と爆笑しまくったのはどうでもいい話。
まぁバカなことばっかりやってる俺たちだけど、気が付けばガキの頃からの知り合いで10年近い月日が経ってたって、嘘だろ。





気が付けば、




*2014.05.08・09・10 day!


2014/05/10


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