※マグノシュタットでの戦争終わった後拉致られて煌に留まっています






「あ、」
「あらっ」
おじさんに真実を全て話すまでは煌に留まるよう命令されて、滞在二日目の今日。
美味しい朝ご飯を食べて、お腹もいっぱいに膨れた所で、天気があまりに良いものだから、ちょっと宮廷内を散歩しようと思った矢先のこと。
僕はいやでも自分の顔が歪んでいくのがわかった。だって、目の前にいるお姉さんは、僕が一番会いたくない人ナンバー1に値する人だから。
「おはよう。身体の方は大丈夫ですの?」
「…うん、まぁ…」
あっちは、僕ほどは思っていないのか目を逸らさず、けれども癖なのか口元を袖口で隠して僕に尋ねてくる。
「……」
「……」
しかし、そこから続かない会話に空気がすごく気まずい。アリババくんと会話してるところを見る限りでは最初の印象からはだいぶよくなったとは思う。でもやっぱり、ウーゴくんともう二度と会えないきっかけを作ったのはこの人だ。
全てを許すことは、僕にはまだできそうにない。
「あの、…っ、…ぇ…と…」
「…?」
紅玉さんが、急に耳まで真っ赤にしてもごもごし始める。何だろう?
「その、ごめんなさいっ!!」
「えっ…?」
がばっ、と頭を下げられた。でも何のごめんなさいなのか、話が繋がらなくて僕にはさっぱりだ。
「あの…?」
「あの巨人っ!!」
きっ、と上げられた顔は、少し涙目だった。
「あの巨人、あなたの大切なお友達だったのよね…?アリババちゃんから聞いたの…今ならわかるわ…友達を失ったらどんなに悲しいか…。謝っても許されないことをわたくしはいたしました…けれども、謝罪だけはもう一度ちゃんとしておきたくて…だから、本当にごめんなさい」
「え…っ…と、」
正直、意外だった。紅玉さん、アリババくんと友達になったことでだいぶ変わったのかな。
だとしたら、アリババくんはやっぱりすごい。白龍お兄さんのこともちゃんと受け入れて、紅玉さんとも…。


許せなかった。


あそこに居て楽しい思い出が残ってるのはウーゴくんのおかげで、僕の一番最初のお友達だったから。
いつまでも僕も意地を張ってはいけないのかもしれない。



ぎゅ、と首から下げている笛を握りしめる。唇を結んで、目の前の紅玉さんを見据えた。
「うん」
「…、」
紅玉さんの肩がぴくりと震えた。そろ、とこちらを伺うように上目に見つめてくる。今にも泣きそうな顔に、僕は少し意地悪くしたい気分になった。
「ウーゴくんが居てくれたから、僕は今まで生きてこれた。だから、ウーゴくんを殺した君を、そう簡単に許すことは、僕にはできない」
「…ええ、そうでしょうね…」
「でも、」
相変わらず目を逸らさず、紅玉さんは真っ直ぐこちらを見つめてくる。おじさんといい、白瑛お姉さんや白龍お兄さんといい、この国の人たちは真っ直ぐ人の目を見て話してくる。その眼差しに、曇りはない。だから、僕もそれに応える。
「今は無理でも、少しずつ、お姉さんを許していきたい…とは思う」
「…っ」
涙もろいのか、紅玉さんの目がまた潤んだ。純粋な人なんだな。あの時僕らに攻撃してきたのだって、紅玉さんにとってジュダルが身内だったからだ。仕様がないことだった。そう、正直がない、こと。
「…ありがとうっ!!」
「うえっ!?」
ぎゅう、と手を強く握られる。細くて華奢で白い、きれいな指。こんなか細い手で、よくジンの剣を奮えるなと思う。
紅玉さんが堪えきれずに涙を流す。何度もごめん、と、ありがとう、を繰り返して。
僕も苦笑混じりに、紅玉さんの手を握り返す。更に泣きじゃくる紅玉さんの周りを飛ぶルフたちは、いたいほど純粋な白に輝いて、きれいだと思った。








許してあげる
(これでいいよね、ウーゴくん?)



2014/04/17


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