まほろばからの置き手紙

 はーいリスナーの皆さんこんばんは!燐架の『おしゃべりミッドナイト』、はじめるのね!
 今日もいただいたお便りをじゃんじゃん紹介していくのね。誰かに聞いてほしかった嬉しかったこと、悲しかったこと、後悔していること、相談してみたいこと、なんでもござれ!この放送時間中も受け付けているから、どーんと送ってきてほしいのね!
 さてさて、さっそく読んでいきたいのだけれど、まず1通目は、カントー地方はトキワシティのラジオネーム『ケチャップ』さんからのお便りなのね。

『美味しいパンケーキが食べたいです。おすすめのお店を教えてほしいです』
 ね。うーん。私の最近のおすすめは、あそこ!ミナモシティのおっきなデパートに最近できたカフェに、分厚くてふっかふかのパンケーキがあるのね!そこがとってもおすすめで・・・・・・って話してたら私が食べたくなってきちゃったのね・・・・・・。あっ、ミナモシティはホウエン地方にあるから、もし次もトキワシティからだったら少し遠いかもしれないけれど、是非ともチャレンジしてみてほしいのね!オープンしたばっかりだからしばらくは大丈夫!この前行ったときは結構賑わっていたから、当分は行列のできるお店になりそうなのね。
 
 あっ言い忘れていたけれど、今回のBGMはイッシュ地方の笛吹き男さんにお願いしたものなのね!とってもとっても嫌そうにしていたけれど、何度も無理言って頼み込んだら録音して送ってくれたの!もうびっくりして一緒に居た人たちにも聴いてもらっちゃった!もちろん大好評だったのね!とっても澄んだ音色でしょ。ときどき坂道を転がり落ちる小石みたいに音がぽろぽろ弾むところがとっても好きなのね〜。笛吹き男さん、ありがとう!またお願いすると思うけれど、そのときはどうか、嫌そうな顔しないでほしいのね、なーんて!
 
 じゃあ次のお便り!ホウエン地方、ヒワマキシティのラジオネーム『すいすい』さんからのお便りです。
『燐架さんこんばんは。いつもおしゃべりミッドナイトが始まる時間を楽しみに待っています。さっそく相談なのですが、ぼくには好きな人がいました』
 わーお、甘酸っぱくて素敵なお話の予感なのね!続き読んじゃうのね!
『その人はとっても優しくて、みすぼらしい姿で貧弱なぼくにも、みんなに向けるような可愛らしい笑顔を向けてくれるような人でした。けれど、僕は彼女に話しかける方法を知りませんでした。何より、その人にはもう、恋人がいたようなのです。だけど僕は、それでもよかった。あなたの笑顔が大好きです、とただ一言、伝えられればそれでよかったんです。でも、ぼくはそれすら伝えられないままここまできてしまいました。だから、彼女に、ぼくの言葉を伝えてほしいのです。ぼくの気持ちが、言葉が、届けられるのか分かりませんが、燐架さん、どうぞよろしくお願いします』
 読んでるこっちがキュンキュンしちゃうのね〜〜!!素敵なラブレター、リスナーの皆さんの中にも、聞いてて恥ずかしくなっちゃう人がいたんじゃないかな。あーもーどうしよう、私までドキドキしてきちゃった!わ、わ、ええっと、『すいすいさんの想い人さん』、もしもこのラジオを聴けたならば、彼の言葉を受け止めてくれると嬉しいです。受け止めたあとどうするかはあなた次第だけれど、どうあれ私はあなたに言葉を届けるためのお手伝いができたこと、とても誇りに思います。これぞラジオパーソナリティの醍醐味ってやつ!
 みんなも、好きな人には好きって伝えるべきなのね。思い立ったが吉日、1度でダメなら何度でも!・・・・・・と言いたいところだけれど、もちろん時と場合によるから考えた方がいいのね。それでも、後悔してしまうくらいなら、次こそは後悔しないように行動するべきだと思うのね。だって、時間は有限で、命も限りあるものだから。
 なんだかすっごく真面目な話になっちゃったけれど、次こそはっていう気持ちはとっても大切にしてほしいから言っちゃった。

 さーてお次はっと。アローラ地方のメレメレ島にある、ハウオリシティからのお便り!ラジオネームは『ハイビスカス』さん。
『燐架さんアローラ!』
 はーいアローラ!テレビで見たことあるから挨拶の時の手の動きも思わず再現しちゃったけれど、これラジオだからみんなには見えてないのね・・・・・・。
 アローラ地方はとっても遠いところにあって、私はまだ行ったことがない地方だけれど、綺麗な花園があるって聞いたことあるのね。あったかくて日差しが強くて、海がとっても綺麗だって。いつかバカンスで行ってみたいのね。
『アローラ地方には最近ポケモンリーグができました。他の地方には当たり前にあるものだと聞いたことがあるのですが、アローラ初の出来事ということでしょっちゅう話題になっていました。でも、私は戦うことが怖くて、島巡りにも出ることができないくらいの臆病者でした。挫折してしまうくらいなら、はじめからやらなければいいと思って花屋で働いていました。でも、お店をしていて、ポケモンバトルもそう悪いものではないのかも、と思うようになりました。それに、何よりも、バトルが必要だと感じるようになったのです。そこで質問です。燐架さんが思う、ポケモンバトルに必要なものって何ですか。それって、誰でも手に入れられるものですか。教えてください』
 なるほどなるほど『ハイビスカス』さんは強くなりたいのね!アローラの気候に合わせた戦法も必要になってくるとは思うけれど、それはおいおい必要に応じて身につけていけばいいと思うから、基本的なことを教えちゃうのね!
 とはいっても、私も戦うことに関しては独学の面もあるから、一概には言えないと思うのだけれども・・・・・・でも、まずはパートナーを信頼すること!それに尽きると思うの!野生なら群れの仲間を、トレーナーさんがいるならその人を。あるいは、パートナーのポケモンを信じてあげるべきだと思うのね。
 あとは、そうそう。お花屋さんで働いているのなら、お花を育てたり、お店の人と協力したりするでしょ?それと一緒!自分が今、何ができて、何をするべきかを理解すること。それも、なるべく素早く。バトル中、相手は待ってくれないから、一瞬の気の迷いが文字通り命取りになっちゃうこともあるのね。そんなときは悔やんだって悔やみきれない気持ちになると思うの。えっとね、だから、パートナーを信じて、今の自分にできることをすること。これが大事。
 もちろん、できることの中に、「逃げる」ってことも含まれているの。逃げることも大事。命あっての物種だから。負ける、勝てないって判断をすることは、とっても勇気が必要なことかもしれないけれど、大事なこと。あなたの後ろにいる、もしくは前で背中を預けてくれているパートナーが深く傷ついてしまう前に、どうか、逃げ出す勇気も持ってほしいのね。
 こんなところかな?なんだか偉そうに色々いってしまったのね。でも、とっても大事なことだって思ってるから、正直に言わせてもらいました。『ハイビスカス』さん、もしよければ参考にしてほしいのね!

 バトル、バトルね〜。私も時々することがあるけれど、ポケモンリーグに行くトレーナーさん達がやるような、レベルの高いバトルには憧れちゃうのね!いつか生で見てみたい。人が多いところにはあまり行かないから慣れていないけれど、人々の歓声だとか、熱気だとか、そういうのっていいなって思うの。なんだか「生きてる!」って感じじゃない?勝ったときの喜びも、負けたときの悲しみも、緊張も興奮も、ぜーんぶスタジアムの中にあるの。すっごくエネルギッシュで、すっごく熱くて、気づいたら一緒に叫んじゃったりしてるような感じ!いいなあ、楽しそうだなあ。
 みんなはバトル、好き?でもやり過ぎはよくないから、ほどほどにするのね。

 どんどんいくよー。お次は・・・・・・うーん、ちょっと字が読めないのね。これ、何て読サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺。
『苦しい苦しいくるしいくるしい縺ィ縺薙m縺しいくるしイクルシイクルシイタスケテイヤダシ∪繧願ニタクナ¢繧後←縲∽ココ縲??豁灘」ー縺?縺ィ縺九?』
 ・・・・・・うーん、ちょっと紹介するには刺激が強すぎる内容なので、これ以上は読まない方がいいのね。リスナーの皆さんにも悪影響があったらいけな闍ヲ縺励。どうか少しでも苦しみから解放されて、蜉ゥ縺になってほしいのね。そうしたらまた、お便り待っ縺ォ縺ゥ縺?。そのときは全部紹介させてほしいのね!たすけて

 さて!気分を!切り替えて!元気に!行きます!!
 お次はジョウト地方!コガネシティのラジオネーム『アリス』さんからのお便りです。
『燐架さんこんばんは。私は3年前の誕生日に、お父さんからガーディをプレゼントしてもらいました。とても嬉しくて、いつでもどこでもガーディと一緒でした。毎日ガーディと一緒に起きて、スクールに行って、遊んで、お風呂はちょっぴり苦手だったからブラッシングをしてあげて、ベッドで眠るときもふかふかの体を抱きしめて眠っていました。そこで質問です。ガーディとうい種族は、トレーナーのことをどれくらい憶えていられるものなのでしょうか。憶えていてくれること自体が悪いことだとは思いません。忘れられると寂しい気持ちになりますし。でも、ガーディにいつまでも私のことを引きずってほしくないとも思うのです。ガーディが気持ちの整理をすることができたのか、気になっています』
 大切な相手のことが気になって未練になってるのね。その気持ち、とっても大切にし続けてほしいし、どうか優しく扱ってほしいのね。そうしないと、想いの重さが負担になってしまうこともあるから。感情は身に余るほど肥大化すれば毒になるのね。私も気をつけなきゃ。
 『アリス』さんは、ガーディのことをとっても大切に思っていたから、だから不安になっちゃったこともあると思うのね。アリスさんみたいに、いいトレーナーでいられたのかな、寂しく思ってないかな、でも何でもないように振る舞われていたらそれはそれで寂しいなって思うトレーナーさんはいっぱいいると思うのね。もちろんポケモンだってそう。
 生き物の寿命ってある程度の枠に収められてはいるけれど、その枠一杯、生きられるわけじゃないから、予期しなかった出来事で離ればなれにこともたくさんあると思うの。それは生きてるか、死んじゃったかとかだけじゃなくて、引っ越しだったりポケモン交換だったり、理由は色々あると思うの。
 今、大切な人のことを思い返してみて、これでよかった、満足だって思えているリスナーさんはどれくらいいるんだろ。
 まだ大好きだよって伝えられていない、明日の献立を決めていない、お買い物に行く約束、守れなかった、ちっちゃなことからおっきなことまで、いっぱいいっぱいやり残したことはあると思うけれど、それはそれとして。置いて行かれた方だって、後悔していることがあるはずだから、それはもうおあいこなのね。
 あの人を置いてきてしまったけれど、でもあの子なら大丈夫、彼ならうまくやっていける、彼女はちょっぴり泣いちゃうかもしれないけれど、きっと、またあのときみたいに素敵な笑顔を見せてくれる。そう思えたなら、きっとあなたのパートナーは大丈夫。だってあなたが大切に思っていた人なんだから。あなたが信頼している存在を信じてあげられるなら、きっと、大丈夫なのね。
 あなたと同じくらい、パートナーもあなたのことを心配して、大切に思ってくれているはずなのね。ううん、きっとそうに違いないのね。
 『アリス』さん、参考になったかは分からないし、部外者の私だけれど、きっとあなたとガーディは、大丈夫だと思うの。きっとまたいつか、どこかで巡り会えると思うのね。
 だって、そういうのってすごくロマンチックじゃない?あったらいいなあ、できたらいいなあって夢見るだけならタダだしね!ふふっ。

 そろそろ最後のお便りになりそうなのね・・・・・・。お次は、どれどれ。イッシュ地方のラジオネーム『ハーフアンドハーフ』さん!ふふ、なんだか欲張りな名前でにこにこしちゃうのね!
『燐架さんこんばんは。わたしは出自が少し変わっていて、でもそれを知らされないまま生きてきました。両親はわたしのことを守るために、わたしが大きくなるまで、何も教えなかったのだそうです。双子のきょうだいがいることを知ったのはわたしが17歳のときでした。そのときのわたしは、自分の出自を知ってとても驚きましたが、きょうだいはもう、生まれたときからわたしの存在を知っていて、変わった出自であることも父親から知らされていました。何も知らないに等しかったわたしに、彼はたくさんのことを教えてくれたし、あたたかく歓迎もしてくれました。そのときは、わたしにもきょうだいがいたんだ、と舞い上がっていましたが、最近、思うのです。わたしは、彼に憎まれてはいなかったのだろうか、と。だって、わたしだけ守られて、わたしだけ、何も知らないまま、ぬくぬくと育てられていたのです。逆に彼は、たくさん危ない目にも遭ったでしょう、いわれのないそしりを受けたことも、あるかもしれません。わたしがそれを知ることはできないけれど、そういうことがあったとしても、おかしくないと思うのです。憎まれていたことを知ってどうしたいというわけではありませんが、それだけがなんとなく気がかりでなりません。燐架さん、わたしは彼に、何か、謝罪のような、感謝のような、罪滅ぼしになるような言葉を掛けるべきだったのでしょうか』
 最後の最後にとっても難しい質問が来ちゃったのね・・・・・・。この時間はあくまで私がしゃべりたいようにしゃべり倒すコーナーなんだけど、ここまでうかつに口を開けないお便り、なかなか来ないのね。
 うーんと、どこから行こうかしら。まず、『ハーフアンドハーフ』さんは、双子のきょうだいのことを嫌っているわけでも、恐れているわけでもなさそうなのね。むしろ好意的な気がする。そして、うしろめたいのね、自分だけが守られていたから。
 お便りの中に書かれてはいなかったけれど、もしかして『ハーフアンドハーフ』さんよりも、きょうだいの彼の方が強かったのかしら。心も、からだも。
 だから、ご両親は彼にあなたを守るすべを教えようとしたのかしら。あるいは導き手になるようにした?いずれにしろ、あなたたちふたりを引き合わせるつもりではあったようだし、どちらのことも大切に思っていたのでしょうね。
 憶測と当てずっぽうだけでしゃべってるからなんとも言えないけれどもね!と言いつつしゃべってるけど。
 あなたが恐れているのは、後ろ暗いと思っているのは、あなたと出会う前の彼が、あなたをうらやんだり、妬んだりしていないかということで合っているかしら?もしかしたら出会ったあとも、その気持ちを抱え続けているんじゃないかと思っているのかしら?
 私は、その気持ちはなかったんじゃないかな、と言い切ることはできないのね。むしろ、そういう気持ちは、多かれ少なかれ、あったと思うの。
 だってきょうだいって、ただでさえ比べられたり、競い合ったりしがちじゃない?私にきょうだいはいないけれど、そういうことはよくあるって聞くのね。さらに、あなたたちは双子。一卵性とか二卵性とか、細かいことは抜きにして、ふつうのきょうだいよりも見た目がそっくりかもしれない。余計に比較されるんじゃないかしら。
 だからあなたはうしろめたい。気にしてしまっている。自分だけひいきされていたんじゃないかって。でも、本当にそうかしら。逆に、あなたのきょうだいはとても経験豊富で処世術も身につけていて、世渡りが上手だったりしなかった?あなたに与えられていたものが彼にはなかったかもしれないけれど、あなたが持っていないものを、彼はたくさん持っていなかった?だってあなたが知らされていなかったことについて、少なくとも17年は、彼が先輩でしょう?その点に関しては、あなたよりもずっとずっとお兄さんなのね。
 どういう生まれなのかは書かれていないからなんとも言えないけれど、自分の出自が世間的に批判されるようなものであったとしたら、最初からそれを知っていることは辛いことかもしれない。けれど、あなたよりも先に知っているのだから、うまく切り抜けるすべをあなたよりも先にく思いついたかもしれないし、たとえ思いつかなかったとしても、耐性ができている。時間は必ず「慣れ」を生み出すから。
 お互いに無い物ねだりなのね。あなたは恨まれていたかもしれない。反面、あなたは彼のことを「いいな」と少しでも思ったことはなかったかしら。私はあると思うな。
 だってきっと、あなたよりも落ち着いていて、飄々としていて、あなたを迎え入れてくれる包容力があったのだから。この世界に、とっくの昔になじんでいたのは彼の方で、あなたは自分のことを異物だと思い込んではいなかったかしら。はじめからいた彼と、途中から飛び込んできたあなたでは、あなたはそもそもこの世界自体に後ろめたい感情を抱いていたのではないかしら。
 あなたをつなぎ止めるくさびになったのは、ほかでもないあなたのきょうだいであるはず。だからあなたは、こうしてお便りを書くほどにこの世界になじめているし、彼に対しての感情をしたためられた。
 それはきっと、彼にとっても幸福なことよ。だってあなたたち、きょうだいじゃない。お互いに、絶対に、替えの効かない、唯一無二の家族じゃない。大好きな人に何かをしてあげることに、理由が必要なの?私はそうは思わない。
 だから彼はね、自然とその手を伸ばしたのよ。他でもない双子のあなたのことを思って。そこから読み取れる感情なんて分かりきっているのね。
 ほら、暗い感情ばっかり気にしちゃうと余計なこと考えちゃうのね。それがあなたの悪い癖よ。
 さ、この話はもうおしまい。そろそろ夜が明けるのね。

 今夜も私のおしゃべりに付き合ってくれてありがとうなのね!それじゃあ、またどこかで会いましょう。
 それではみなさま、また来世で。

prev | next
さいしょから
- ナノ -