「うそ、みんなどこ行っちゃったの?…。」
今年最後の花火大会。学校のみんなと浴衣を着て見に来ていた。地元じゃ一番大きいから見渡す限り人人人!だからはぐれないようにって必死についていってたのに、気付いたら周りは知らない人で、思わず神社の隅で足を止めて溜息を零した。カサって音がして、ビクンと肩をすかせる。人は沢山いるけどここは神社でちょっとだけ人が散り分かれていて…
「なまえ!?どないしてん!一人?」
聞き覚えのある声に顔を上げると同じ部活の陣先輩が浴衣を着てそこにいた。知った顔にホッとしてよろけそうになる私を「危な!」陣先輩の腕が支えてくれた。
「あの、友達とはぐれちゃって。」
「ほんま?この人混みやと、合流難しそうやな。あーえーっと、なまえがええなら俺、一緒におるけど?」
「え、いいんですか?陣先輩一緒に来てる人いますよね?」
ちょっとだけ遠目に見える先輩の同級生達。みんな浴衣で楽しそうに喋っている。
「いやあいつらはええ。俺がおらん方がええ思っとるよ、ぜったい。」
「…じゃあ陣先輩と見たい、です。」
「おうおうおう!喜んで!あ、なんか食う?かき氷でも買って食わへん?」
「じゃあ一緒に行きます!」
「ほな、行こか。 」
カラカラと下駄を鳴らして数歩歩いた先輩は、やああって振り返るとちょっとだけ苦笑い。あ、もしかして朝海先輩に私なんかと一緒にいるの見られたくないから?だって陣先輩の視線の先、こっちを見て微笑んでいる先輩達がいて。
「あの、やっぱり迷惑ですよね?誤解、させたくないですよね?」
「誤解?なんが?」
「朝海先輩とかに、勘違いさせたくない、ですよね?」
きっと陣先輩が見ているのは私じゃなくてあそこにいる朝海先輩。仲良しでよくよく話している姿を見る。私なんかが適う相手じゃない。
「は、朝海?なんで?全く関係ないねんけど。え、なまえのんが誤解してない?」
「え?す、好きなんですよね?朝海先輩のこと。」
私の言葉に心底嫌な顔で首を振った。
「勘弁してや。朝海の男はやましょーやって。あいつらほんま面倒くさいバカップルやねん。なんかあると一々俺に相談してきて。ちゃうで、あんな奴ら。そうちゃうて…―――。」
スっと私の手をとる陣先輩。えっ!?先輩!?
「またはぐれたらあかんから。手繋ぐ。」
「…はいっ!」
「おう。それから浴衣、よう似合っとる。」
「…ありがとう、ございます。陣先輩もかっこいいです。」
「…嘘でも嬉しいわ、」
「嘘なんか言いません!本当に思ってます!部活の時も今もすっごいかっこいい!って!」
ついそんな声をあげると陣先輩が照れくさそうに振り返った。
「嬉しいわ。そーいうん言われ慣れてへんねん。なまえだけやん、そんな風に言ってくれるん。ほんまいつもありがとうな。」
ポンポンって繋がっていない手が私の髪を撫でた、そのまま肩に落ちた手。陣先輩を見つめ上げた瞬間「―――好きやで、なまえ。」陣先輩からの告白と、その頭上であがる花火。
「なんで、このタイミング!今ええとこやんに!たくぅー。返事はいらんから。気持ち伝えたかっただけやん。」
そんなのずるい。私だってずっと大好きだったんだから。ぎゅっと陣先輩の胸に顔を埋めて「私も好き。」小さく言うとふわりと抱きしめてくれた。
「うわーここ1嬉しいわ!」
「私も!」
今年最後の花火大会、素敵な彼氏ができました。
Thanks LOVE MINORU ★
prev / TOP / next