登坂広臣。私の幼馴染でそう、昔っから人気者だった。それはもちろん、高校生になった今でも変わらず、いやもっと、むしろ今絶頂なんじゃないの?ってぐらいモテている。顔がいい上に人見知りもしなく、誰に対してもフレンドリーで友情に熱く色んなことを楽しむ人だった。そりゃ女子達はみーんな臣くん臣くんって、夢中になるし、彼女の座につこうとみーんな必死だ。
幼馴染ってだけの関係で終わりたくない私もその一人だなんて大きな声じゃ言えないけど。
「英和辞典貸して、忘れちゃった。」
移動教室から戻ると臣くんが私の机に座っていてそんな言葉をかけてくる。勿論ながらクラスの女子達はそれを羨ましがっているわけで。よくよく忘れ物をする臣くんは、こうして幼馴染の私に借りに来ることも多かった。
「また?最近多いよー臣くん!」
文句を言いながらも内心喜んでいることは内緒。友達なんて沢山いるだろうし、貸してくれる女子だってざらにいる。でも臣くんが選ぶのは私で、それがなんとも言えない嬉しさだった。私から英和辞典を受け取ると、ニヤリと口角を上げてポスっと私の頭を撫でる。
「わざとに決まってんだろ!お前に逢う口実だよー!じゃあな!」
…はい?何今の。わざと?口実?ドキドキ胸が脈打つ。だってだってそれっていわゆる…
「ちょっとなまえ!今の告白?登坂くん、告った?」
「いやいやいや、違うでしょ。またからかっただけだよ、きっと。」
そう言ったものの私の心臓は収まらなくて、その日中ずっとドギマギしていたなんて。
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