「なまえ今夜空いてる?」
「え、今夜ですか?」
「うん。ほらこの前のプレゼン頑張ったから奢ってやるっての。」
「え、あれほんとだったんですか?社交事例かと思ってた!行きます行きます!わーい!」
「ふは、じゃあ6時に出れるようにしといて。」
ポンって頭に手を乗せられてニンマリ。だってだって登坂さんに誘われるなんて自慢中の超自慢。うちの社でも今市さんと並んでツートップって言われるぐらいの男前で人気の登坂さん。いわゆる私の上司って奴だけど、人柄も良くて愛想も良くて女性からの人気も高くて。そんな登坂さんに誘われるなんて夢見たい!これはナオに報告しなきゃー!LINEを開けて早速幼馴染であるナオに自慢の言葉を送ったんだ。
さて。とりあえず定時間際、女子トイレにて化粧直し。普段はあんまり付けない香水なんかふっちゃったりして。鏡に映った自分を見て我ながらニッコリ。登坂さんの隣歩くんだからこれぐらいはしなきゃだよね。身だしなみもしっかりしてる人だからお洒落には気を使わないと!なーんて思いっきり丁寧に化粧を直した。
トイレから出た瞬間、スマホがブーブー振動していて。画面を見ると【直人】って文字。早いなナオってば!そう思って通話ボタンを押した。
「もしもし。」
【おいなんだあのLINE!つーかトサカってどいつ?】
いきなりの罵声に顔が笑う。仮にも上司なんだけどなぁ、登坂さん。知らないとはいえ、呼び捨てさせてごめんなさーい。
「どいつって、上司だよ。この前のプレゼン頑張ったから!って。冗談で奢ってください!って言ったら、本当にご飯連れて行ってくれるって!もーテンションあがりまくり!」
【…それ罠じゃねぇの?お前は一々隙だらけなんだよー。そもそもプレゼン頑張ったからって、じゃあトサカはそいつら全員に毎回奢るわけ?なぁトサカに言い寄られてるとかないの?】
いったい何をそんなに焦っているのか、はたまた心配しているのか、登坂さんはそんな風に適当に女と遊ぶような人じゃないのに。ナオは何も知らないから適当言うのよねぇ、全く。
「登坂さんはそんな失礼なチャラ男じゃないから安心して!」
【いやチャラ男じゃない男なんてこの世にはいねぇから!お前どこの店?】
「…知ってどーするのよ?」
【確かめに行く!】
「絶対来ないでね。じゃあもう時間ないから行くね!」
【あ、待て待て、切るな!】
叫ぶナオの言葉を無視して私は電話を切った。ちょうど目の前に登坂さんが顔を出してニッコリ。
「いける?」
「はいっ!」
タクシーに乗せられて都内のお店に連れて行かれた。
prev / TOP / next