02

雪乃さんと出逢ったのは今から半年前の事だった。大学の時の先輩でもある隆二さんとは社会人になってからもよくよく飲みに行く仲で、ドン底だった俺を救ってくれたのも隆二さんだった。仕事で大ミスしてクビにされるのが怖くて自分から辞めて、付き合っていた彼女にフラれて、アパートの契約も切れて、行く所のないこんな俺を快く自分の家に住ませてやるって言ってくれた隆二さん。そこにいたのが雪乃さんだった。彼女と同棲している部屋にたかだか大学の時の後輩の俺を拾ってくれる優しい人なんてこの世に隆二さん以外はいないと思う。そしてそんな隆二さんの言葉に迷うことなく頷く彼女の雪乃さんも。だけど救われたんだ、二人の笑顔に。だからこの先どんな事があっても二人を傷つける奴は許さないって。

そう決めたあの日から半年。俺は絶対にいってはいけない道を歩きだそうとしていた。


「好きです、雪乃さんのことが。」


キョトンとした顔で俺を見つめる雪乃さん。そりゃそうだよね。だってあなたは隆二さんの恋人。俺はそんな隆二さんの後輩でただの同居人。このマンションの801号室のお荷物みたいなもん。


「へ?冗談だよね?」


苦笑いを零す雪乃さんに残念ながら俺は首を横に振った。自分の想いをこれ以上誤魔化しきれないと思っていた。気持ちが溢れそうで爆発しそうでいっぱいいっぱいで。


「女として見てます、雪乃さんのこと。」


俺の言葉に雪乃さんが一歩下がった。…思った通り、ドン引きされた。あー今日で半同棲も終わりかな。臣さんとこでも行くかなぁ。なんて一瞬で考えていた。

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