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平成最後の秋の夜長…やり残したこと、それは…――――
「ダメに決まってるでしょ、そんなの!!」
…目の前には仁王立ちのマイコ。そんな怖い顔しなくたっていいじゃん。市販の泡風呂の元を大量に買ってきて、それを部屋のバスタブに入れ込んだんだ。思った以上に泡泡しちゃって、流れ落ちる泡を見てマイコにぶっ叩かれそうな勢いでそんな言葉まで浴びせられる。これじゃああたしだってシュンとしちゃうよ。
…せっかく健太を呼んで2人で入ろうって思ってたのに。
「マイコも長谷川と一緒に入れば?入りたいんでしょう?本音は。」
物の見事に思いっきり目を開いて真っ赤な顔をするマイコは見ていて可愛いけど、面白い。あたしにはあの2人がイチャついている所なんてとうてい想像はできないけど。そもそも長谷川が恋愛要素のある男に見えてなかったし。
「な、何言ってんのぉ!!!!」
「早く使いなよ、あのゴールデンボックス。マイコが許してあげなきゃキスもできないんじゃない?長谷川は。」
「…したもん、とっくに、キスぐらい、してるもんっ!!」
マイコにそう叫ばれて思わず固まる。
「へぇ、以外!どうだった?初キスは?」
「…えっ!?どうって、別に普通。そんな事より、」
マイコの頭にニョキって角が見え隠れした時だった。ガチャッてドアが開いてゆき乃が帰ってきた。
その後ろ、健太を連れて。
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