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とある高台の上に海の方を向いた男が5人緊張の面持ちで立っていた。その後ろに集まった女子達は皆、綺麗に自分を着飾っている。それもそーだ、これから対面する人の中に運命の相手がいるのかもしれないのだから。
「はぁ、ヤバい。」
「めっちゃ緊張する!」
「心臓痛い、」
「………、」
もはや、言葉すら発せない女子もいるんじゃなかろうか。
ここに集まった男子5人はいわゆる年下王子様であって、それを待っているのがオトナ女子4人だ。女子達はヒソヒソと輪を作って言葉を繋げる。
「どーする?」
「私一番右の人がいい。」
「あ、私も!」
「じゃあ右にしよう!」
声を揃えて「1番右の人、お願いします!」そ?な女子達の言葉にくるりと反転した右側の王子。派手な銀髪の下、綺麗な顔が照れ臭そうにこちらを向く。長身の彼は軽く頭を振ると真っ直ぐに女子達を見てペコっと小さく会釈をする。
「初めまして、堀夏喜21歳。大学生です。休みの日はスタンドのバイトか、趣味でダンスやってます。…えっと、よろしくお願いします。」
緊張した面持ちの夏喜は最後にハニカムと女子達も自然と笑顔になる。パチパチと湧き上がる女子からの拍手に、口元を隠してまた小さく笑った。
こんな風に女子に指名されて年下王子様の自己紹介が始まる。
「こんにちは。神谷健太です。うちなんちゅーです。」
独特のイントネーションでそう言った健太に、「あ、沖縄!」なんて食いついたのは、オトナ女子の1人、立花朝海。和歌山から上京してきてOLをやってる朝海が興味津々で健太を見つめる。そんな朝海にニコッと微笑むと「そう、沖縄です。キックボクシングやってます、年は23歳です。夢はでっかくFBI!よろしくお願いします。」黒皮のレザージャケットを羽織った健太がリスみたいな可愛いらしい前歯を見せて笑うと、朝海の心臓がキュンとした事をまだ誰も知らない。
「初めまして、岩谷翔吾です。年は22歳。転勤族で色んな県を点々としていたので、関西訛りが強いです。大学生で、家庭教師のバイトしつつ、趣味は僕もダンスです。よろしくお願いします。」
ふにゃって擬音が似合いそうなその可愛らし笑顔とちょっと小さめの身長。ピンク色の短髪をがっちり固めて真っ直ぐ見つめる瞳はちょっと意思が強そうで、笑顔とのギャップに、オトナ女子の母性をくすぐるに違いない。
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