舞い踊る花弁




「 ... サクラ ... 重いぞ .... 」


俺は一体どれくらいの時間眠っていただろうか、辺りを見渡して大体の状況を把握し余りあれから時間が経っていないことに気付く

それに俺は確かにあの時あのお面ヤローに殺された、筈だった

だが俺の身体に取り巻いていた千本は隣に綺麗に纏められてあり数え切れない傷口も何故か塞がれていた


この場に医療忍術を使いこなせる奴なんていない筈だ 、カカシのヤローか?いや、彼奴は再不斬とやり合っていてそんな暇など無い筈だ


暑苦しく俺に抱き付いてくるサクラをどうにか退かし事情を聴いた


「 ナルトとお面ヤローはどうした? 」

「 動かないで!ナルトは無事よ!それにあのお面の子は死んだわ ... 」

「 死んだって ... ナルトがやったのか ... ? 」

「 う ... ううん ... 私もよくは分からないけど再不斬をかばって ... 」

「 そうか 」

思わず我ながら動揺を隠し切れなかった、早とちりをしてナルトがお面ヤローを殺したのかと頭の中で。

サクラの言葉に少しホッとし胸を撫で下ろした俺は臆病者だろうか


「 サスケ君のお姉さんがね 、何故だか分からないけど此処まで来てくれたの 。それで危なかったサスケ君を医療忍術で回復してくれて ... 本当に良かった 」


「 姉さんが !? 何で姉さんが此処に居る !」


「 あっ!ちょ、サスケ君 !」


またもサクラの言葉に激しく動揺しきり胸が異常な程にざわめく

何で此処に来たのかは今この状況ではどうだって良かった

いくら姉さんでも再不斬相手じゃどうなるか分からない、あのカカシでも防戦一方になってしまう位なのだから


姉さんのお陰で身体は確かに軽い、

だが姉さんの元へ走り近づく度に心臓は脈立ち足取りが重くなってしまう



「 サスケェ ! 」



呼び止められ脚が止まり振り返る
ナルトだった

脚を止め背後に居るナルトへと右手を上げる、生きている証だ




「 姉さん ... 何で 、 」


「 Let ' s Begin !! 」


「 姉さん っ !クソっ ... 」


残頭達が目の前にいる姉さん達に襲い掛かろうとする、きっと一人や二人くらいなら俺でも倒せるレベルだろう。けれど数が洒落にならいない。物凄い虫けら達だ


「 サスケ ! ... 行くな ! お前が行っても足手まといになるだけだぞ 」


「 こんな時に何言ってやがる ! 姉さんが危ないんだぞ ! てめェも何とかしろよ ! 」


「 お前の姉はこんなモノでへばる奴じゃ無いだろ ? 」


「 ... !! 」


悔しかった


俺の方が何倍も姉さんと共に過ごした時間は比べ物にならない位多いはずなのにカカシの方が姉さんの事を知り尽くしてる気がして無様だ


脚を止めカカシの言う通り大人しく目の前の光景を視界に留める

無数の数え切れない残忍達が姉さんに襲い掛かる


目を背けたくなる ...


「 流石に右手だけじゃ無理かな ... でも忍具も術も何も使わない 。ハンデあげる 」


確かに見えた
口角にうっすらと笑みを浮かべ高く上空へ飛び立つ

こんな相手に何を余裕ぶっこいてんだ



ドォォォオオオオン ッ !!



「 アイツやりすぎだ ... ナマエの奴 」

「 うえ ... や、やべェ ... 」

「 サスケ君のお姉さんって何者なのよ ... 」

「 こりゃァ鬼人よりも強いんじゃないのかァ ... ? 」


四人がそれぞれ個々の感想を述べるも俺は言葉など出ず絶句してしまう

ぽかーん、と口を呑気に開けアホ面を見せるのは何年振りだろうか


カカトで一気に地面を一瞬にして荒地に変えてしまった姉さん

殆どの残忍達が吹っ飛び川へ流されてしまった


残りの者たちはそんな姉の恐怖を目の当たりにして恐れを抱いたのか颯爽とこの場を去って行く


「 やっぱ今度は右足だけで十分だったか 、はは 」


辺り一面を見渡し殺風景に拡がる景色を見、舌を出して微笑む姉

久しぶりに見た姉さんの笑顔
しかも作り笑いじゃない素の笑顔



前髪少し切ったのか?
あの膝のバンドエイドは何だろう、任務で傷がいったのかな
ピアスも見たことない物をしている。任務の報酬で新しく買った物なのだろうか


調子が狂っちまう
アンタを目にしたら ... 俺が俺じゃなくなるんだ


「 会いたかった ... 」


「 心配かけさせないでよ 、ウスラトンカチ 」


サスケの真似 、と言ってまた舌を出して照れ臭そうに微笑むアンタは恥ずかしい例えながら天使の様に見えた


生きていて良かった


「 巫山戯んな 、バカ姉貴 」


「 折角治してあげたのにその言い方は無いでしょ 」


「 ... さんきゅ 」


いつもの様にツンと俺の頬を人差し指で突つく
姉さんの指先は微かに冷たい気がした



そして再不斬の死を見届ける

正直奴等の死に様なんて興味は無かったが隣にいる姉さんが僅かながら瞳に涙を浮かべていたのでそっと手を握った

昔からアンタは何に関しても感動してしまう奴だったからな


力無く握り返して来た手がまた、愛しく感じた






________________







「 なら私は帰ろっかな 、明後日からまた任務は始まるし ... 」


取り敢えず橋を後にしタズナの家の前へと俺達は移動していた

まだそれぞれが傷だらけであり正直身体は疲労が溜まりクタクタだった


そんな中姉さんは何事も無かった様に澄ました顔をしてやがる
本当に女かよ ...


「 そうか 、もう" アレ "が始まる時期か 。今年はナマエも参加するみたいだネ 」

「 カカシもよくサスケ達と話し合って考えるんだよ 」

「 アレ って何だ ? 」

「 その内分かる事 。じゃ、私は帰るね !」

「 あ、姉さん ... ! 」

「 ん ? 」


思わず背を向ける姉の手首を持ち引き止めてしまった

特に用は無い、話すことはもう終わったし帰還すればいつでも何でも話せる


ナルトやサクラやカカシが見てるっていうのに俺は何してんだ


黙り込んでいる俺に疑問を抱くのも無理はない、姉さんは俺の顔を覗き込んでくる


「 どうしたの ? 何かあった ? 」


「 直ぐ帰る、から ... ちゃんと待ってろよ 」


周りの目など気にせず俺は真っ直ぐに姉を見つめ上記をしっかりと述べた

そんなことか、と言いたげな瞳を宿す姉さんの姿は不意にも可愛らしかった

返事の代わりにコテンと首を傾げ微笑む


口寄せの印を結び見事に立派で妙な気品を漂わせる狼を姉さんは呼び出した

こんな化け物に近い聖犬が居るとは ... カカシの忍犬とは大違いだな


何年も共に過ごして来たのにも関わらず俺は姉の事を知らなさすぎる
それが悔しい、頭に響く。

きっと姉の戦闘スタイルなどはカカシの方が俺より知り尽くしているだろう


軽々しいステップで狼の背へ乗り此方を見下す

姉の背後にはギラギラしい太陽が背と重なり反射で表情が見えなかった


「 姉さん ! 時間がある時俺の修行つけてくれないか ? 」


腕で太陽の光を遮りながら上にいる姉へと問いかける

勿論姉は快く受け入れてくれた
深く頷いてる



辺りの霧が舞ったところでやっと狼の顔付きがお目にかかることが出来る


「 な 、んで ... 」

「 ... 」


空気が途端に流れを濁し緊迫な雰囲気へと誘われる

牙を剥き出しにし此方を威嚇してるのはまだ良い


赤い瞳 . 最後にその眼見たのはつい先程の事 。

うちは一族特有のその眼


「 何で写輪眼をコイツが ... 」


姉さんが弄ったのか?いや... 姉さんはうちは一族ではない、写輪眼を手にする事はまず無理だろう

しかも何故人間ではないモノがこの眼を開眼している?うちは一族と何か関係があるのか?


背後を振り向くとナルトとサクラは予想通り驚きを隠せていない
だが、其れは俺とは違う極一般的な大人数派の驚きだろう

至ってカカシは冷静だ
矢張り何か知っているな、コイツ



向き直すと其処にはもう姉さんと化け物の姿は無かった


代わりに花弁が何枚か舞い散っている

心拍数が増す




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