秘策


彼等はきっと今は夢見の世界を
一望し楽しんでいるだろう

辺りに広がる高貴な馬車に立派な
造りの建築物

身のこなしも殆どの住民がそれなりの
物を着こなしており上品ささえ感じられる


私達も一般的な馬車の中に今
揺さぶられて居る


イザベルに関しては身をも乗り出し
窓から景色を一望とし楽しんでいる

私達 上の人間 からすると全く何時も
と変わらぬ此のくだらぬ情景も
下の人間達 からすると宝石の様に
見る目は呆気無く変わってしまう物


彼等の反応を機にもう少し自分の
人生に光を灯さなければ、と感じさせられた


そんな中私の隣に座るリヴァイは
外の風景に興味の一つも示さなかった


昨晩の事は特に何も気に掛けて
居無い様だった

あの女は一体此奴にとっての何者なのか

何故一度愛した女性を意図も簡単に
あんな風に一瞬で突き放せるのか

2人は一体あの環境でどんな風に
愛を紡ぎ合ったのか


そんなどうでもいい内容を私は
少し気にしていた


だけど当の本人には流石に聞けず
心の内に留めて置こうと思う


「 そういや お前 名は何ていうんだ ? 俺の名はファーラン・チャーチ です 」


金髪の若僧がふと私に問い掛けて来た
若僧といってもきっと私の方が年齢的
には下だろうけど


「 私の名はナマエ・ミョウジ 。ファーラン宜しくね 」


目の前に座る彼にそっと右手を
差し出した

私は握手を求めた
此の人はきっと腐り切っては居無い
まだ希望が在る人材だから ...

エルヴィン分隊長の為にも
今の内に此奴等と良好関係を築き
中身の詳細を探る策略だ


ファーランは左手で頭をポリポリと
掻きながら私の手を手に取り見事に
握手を交わす事に成功した

頬がほんのりと赤いファーラン


「 俺はイザベル・マグノリア!宜しくな!所でお姉さん歳幾つだ ? 」


続けて満面の笑みを向けて彼女も
ファーランに乗っかり問い掛けて来る

私に対しての敵視観は無くなった
のだろうか 、其れとも只の今の
気分なのだろうか


「 イザベル宜しくね 、歳は今年で18になるの 。まだまだ未熟者で 勘弁だわ 」


「 18 !? 意外だな 〜 .. お姉さんは大人びてるしまぁ .. ボンキュッボンだし ? もう少しいってるかと思ってたぜ 」


「 おい!イザベル!御前は何処見てんだよ 、エロ餓鬼が .. 。」


「 そう言うファーランだってやらしい目でお姉さんの事見てたろ!へッ、野郎ってもんは怖い怖い 〜 」


「 此奴 〜 .. !」


目の前に繰り広げられる勇ましい
喧嘩っ振りに私は呆気に取られた

最初の一言からこんなにもお互いの
緊張が解けるなんて思って無かった

案外此の人達単純なのかも知れ無い


難しい男が1人 、私の隣に居るけどね


「 アンタも自己紹介したらどう ? 」


2人が言い争ってる間にさりげなく
声を掛けてみる

彼の表情は相変わらず " 無 " その物で
内心何を考えているか全く読めなかった


私の言葉に反応したのだろうけど
決して此方には振り返らず窓の
景色を眺める


男性なのに形のいい唇

透き通った瞳に切れ長の眼

鼻は程よく高く綺麗な坂を描いていた


そんな横顔に無意識に魅了されている
自分が悔しかった


「 俺の名前を散々叫んでた癖に良く言う 、其れに自己紹介なら昨晩したろ 」


「 私が名乗っただけじゃない 、貴方の口からは何も聞いて無い 」


意地張りにも似た私の態度に嫌気が
差したのか横目で私をチラリと見やる


「 何奴も此奴も煩ぇ雌豚ばかりだ .. てめぇに教える事等何も無い 」


「 ... 歳くらい教えてよ 」


「 22だ 、知った所でどうする 」


「 別に 。分隊長に報告するだけ 」


「 ..... 」


殺気籠った瞳で今度は数秒も
睨みつけられた

此れで彼の殺気に付き合わされるのは
二度目 。殺気出すのが大変お上手な事


リヴァイは直ぐに窓へと視線を戻し
窓一面に広がる風景を満喫している


22歳か、鍛え始めるのには
いい年齢なのじゃ無いかな


其々が其々の想いを胸にしながら
四人の時間は刻々と過ぎて行った









「 着いたわ 、此処が調査兵団本部よ 。私は此れから此処を外すけど直ぐに担当の者が来てくれるから其れ迄此処で待っててね 」


勿論イザベルとファーランは深く頷いて
くれた

リヴァイは相変わらず私の言葉に
関心を示さない

変な気を起こさ無いでくれたら一先ず
其れでいい









「 分隊長 、ナマエです 」


「 嗚呼 、入れ 」


彼等を後にし分隊長の元へ早速
やって来た私

先ずは任されていた資料の確認済みの
物を提出する


「 まだ期限では無いのに流石だな 、自慢の優秀な部下だよ 。ナマエは 」


「 滅相も御座いません 、お陰で徹夜続きでお肌の調子が悪いんですけどね 」


冗談ぽく両手で己の両頬を包み込み
じとっと分隊長をわざとらしく睨む

まあそう言うな、と軽く流してしまう
分隊長が此れは又憎い事



「 彼等3人の件何ですけど ... 」


「 君を呼び出した理由は其の件だ 、様子はどうだ 」


「 昨晩リーダーことリヴァイに関して何ですけど恋人らしき人物が居たようですね 、他の2人に関しては問題無さそうですけど 。2人は私にも打ち解けている様にも見えますし」


言うか迷って居たがもしかすると
此れからの事を左右する事態に
なりかね無いので私は仕方なく
重い口を開け彼の交流関係を告げた


決していい気はしなかった

何故だろう


「 ほう ... 奴にも愛する者が居たとはな 」


当時鉢合わせした私と全く同様の
考えを分隊長は感じていた

きっと誰もがそう思うであろう


「 引き続き3人の監視役はナマエに任せる 、少なくとも私の命を狙っているだろうからな .. 結果殺れ無いと思うが 。」


「 解っています 、私が責任を持って監視しましょう 」


「 頼む . それから今期の壁外調査へ彼等を投入するつもりだ 。それなりの配慮も宜しく頼む 」


「 はい ... ? 分隊長、幾ら其れは無茶が在るかと 。可能性を十分に秘めている彼等はもう少し鍛え上げてからが宜しいのでは ?そんな一瞬で命を落としてしまう何て ... 」


最近私は此の方に反論意見しか述べて
いない気がする

だけど矢っ張り最近此の方が何を
考えて何を望んでいるか全く判ら無い

リヴァイの事といい分隊長の事といい
いっその事超能力者になりたい位だ

貴方達の脳裏に一瞬でもいいから
お邪魔してみたい


「 死ぬと決まった訳じゃ無いだろう 、期待が在るからこそ投入し接触を図る 。実践が一番の特訓だ 、命懸けだがな 。其れに調査兵団に入った以上命はもう自分の物では無い .. この世の為 、如何なる人類の為に心臓を捧げて貰わんと此方側も困るからな 」


分隊長の言葉は、もっともの事だった
そんな当たり前の事解っていなかった
自分を又酷く攻め立てた


此の重苦しい世界に組織に何度も
挫折しそうになった事が在る

時には命を己で絶とうとしたこと
だって合った

だけれどそんな腐り切った私を
分隊長や親友、友人が私を変えてくれた


そんな私が今此処に至る


此処で、此の職務で、命を絶つ

誰かの役に立つのなら喜んで捧げる




軽い雑談も済み私が未成年にも関わらず
今夜は呑み明かさないかと誘いを
受けたが気分に乗らなかったので
丁寧に断っておいた


自室へ戻り少し頭を冷やす


果たしてエルヴィン分隊長の
策に彼等はまんまと嵌ってくれるのか




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