初恋、いただきませんか?(ちとくら)



学生時代の記憶というのは、いつまで経っても褪せないものだ。


テニスに明け暮れた日々を、懐かしく思うほどには大人になった。
節目の行事も、去年終えた。
当時の面々とは相変わらず連絡を取り合っていて、同窓の友というのはいつまで経ってもあたたかいものだと思う。









「蔵ー」
「おー、やっと来たんか」

物思いに耽っていた俺を現実に引き戻したのは、そんな懐かしさとは無縁の声である。
もちろん彼も校友ではあるのだが、この数年間一緒に居たせいか感慨深く思うことができない。

「久しぶりたい」
「たった1週間ぶりやろ」
「たいが長い時間に感じたばい」

へらり、と笑う顔は、あの頃からそう大して変わっていない気がする。
けれど確実に時間は流れ、もともと背の高かったお前はあれからまだ背が伸びて、声も少し低くなった。
よくよく思い返せばわかることだが、身体的な成長とは日常に埋もれていると感じにくい変化である。


こんな風に、学生時代の思いに耽ってしまうのは、先日購入したフレーバードティーのせいだろうか。
爽やかな香りはまるであの日々のようで、新鮮でいてどこか懐かしい。
特別茶に興味があったわけではないが、気が付けばその茶葉を買っていた。
そして自然と、一緒に飲みたいと思ったのだ。
あっさりした爽やかさの中に、どこか甘みがあるような、それが、あの頃の気持ちみたいで。

「何しとっと?」
「ん〜まぁ座っとき」

小さな子供のように聞き分けよくキッチンから出ていく姿はどうにも愛しくて。
ずっと変わらない気持ちでもある。
変わったのは、それに少し慣れてしまった、ということくらいだろうか?



ハンディクーラーにお湯を注いで、茶葉が踊る。ひらひらと舞うのは、あの日々に感じた気持ち一つ一つのよう。
街中で鼻腔を掠めたほのかな香りではない、直に包み込む香りはより鮮やかだ。



「お待たせ」
「お茶?」
「そ、この前偶然見つけてん」
「えぇ香りやね」
「せやろ?なんとなく、お前と飲みたくなってん」
「俺と?そぎゃん嬉しくなるこつ言われっと照れるばい」

言いながら余裕のありそうな笑顔を浮かべる。お前は昔からいつもそうだ。
余裕がないのはまるでいつも俺一人みたいで、焦ってた。
けれど、余裕があるように見えるだけなのだと、今はちゃんと知っている。
本当に照れては居るのだ、ただそれを誤魔化したりせずにすんなり受け入れる純真さがそれをあからさまに感じさせないだけで。

「あ、めっちゃうまいな、これ」
「蔵、飲んでなかったと?」
「おん」

すっと胸に染み込むような。
あぁ、この茶を作った人もこんな気持ちを知っているんだろう。そしてふと、懐かしんでみたりしたのだろう。

「懐かしか気持ちになるたい」
「…うん」
「そいで俺と飲みたくなったと?」
「かもしれへんな」

そんなに嬉しそうに笑われてしまっては、こちらの顔も緩んでしまう。
あぁ、やっぱり、お前と一緒に飲んで良かった。

















新鮮なグリーンレモンの香りと、爽やかなレモングラスをブレンドした、心さえ満たすような緑茶。
みずみずしく爽やかなその香りは、あの頃の「初恋」の思い出のよう。

あの日の初恋を君と。




+++*


完璧に自分の趣味に走りました。
ル/ピ/シ/アのお茶が大好きなのですよ…で、ハツコイってお茶がめちゃくちゃおいしいのです。お茶のコンセプトみたいなのもとっても素敵で。是非、ちとくらに飲んでいただきたいと←
白石は存外乙女な部分があると良いです。
初恋でもある千歳との色んな出来事をふと思い出して大事にしてるといいな。
これをきっかけに茶を嗜むようになった白石が定期的に千歳とおうちお茶会しているといいです。千歳はそんな白石が可愛くてたまりません。

ちとくら可愛いね。





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