白石蔵ノ介の日常考察(ちょこっと白赤、間接的に光謙)

まぁなんやかんや言うてもめっちゃ幸せなんとちゃう?
意識してみたら日常ってのは結構特別なもんやで








「白石ー!んなちんたら走っとったら浪速のスピードスターが抜かしたるっちゅー話や!」
「お〜おはよーさん、ようこの距離走ってくんなぁ」
「ほな先行くでー!」
「また聞いてないやん…謙也ぁ!足元気ぃつけやー!!」

朝から元気な親友を見送って、俺はまたちんたらチャリこいで。
特別暑くも寒くも無い、えぇ朝や。
ん〜はよ朝練したいなぁ、なんて思うのにスピードが速くなることはない。

あ〜謙也に紐でもつけて引っ張ってもろたらよかったなぁ。
それやったら掴みもばっちりやし一石二鳥やん。





まぁそうこう言うてたら着いてまうのが不思議やわ。

「あら蔵りんおはよーさん、いつも1分一秒と違わぬ到着やね」
「おはよーさん小春」
「白石!何小春口説いとんねん!!」
「おーユウジもおはよーさん」

毎度おおきにもうかりまっか。なんて決まり文句みたいなもんやなぁこんなやり取りも。

「お?珍しいこともあるもんやないかい」
「今日はたいぎゃあ気持ちよか朝とね」
「せやなぁ」
「たまには早起きもえぇね」

朝練なんて滅多と参加せぇへん千歳が今日は天気が気持ちえぇからって俺より早くコートに居った。
毎日こんな気候やったら千歳ももうちょい部活来るかもしれへんなぁ。

「お、やっと来たんか白石」
「謙也が速すぎるんやで」
「ま、浪速のスピードスターやからな、当たり前っちゅー話や」

朝日に負けへんくらいキラキラした笑顔は昔っから変わらへんなぁ。
ほんまにお前はスピード抜いてもスターやな。スピード抜いたらお前とちゃうけど。
せやからやっぱりお前はスピードスターなんやろな、なんて。

「白石ぃー!謙也ぁー!おはよーさん!!!」
「おぉ金ちゃん、今日はちゃんと来れたんやなぁ」
「せやでぇ!やるときはやるっちゅーねん!」
「偉いで」

もう通い始めて随分経つというのに、金ちゃんはいまだに道に迷うことがあるらしい。
どないな道通ってきてんねん。金ちゃんのことやから山でも走ってきてんちゃう?
あり得るわ。冗談やないからネタにもならへん。

「先輩等朝からうるさいっすわぁ」
「うるさいんは謙也だけや財ぜーん」
「そらえらいすんません、てわけで謙也さんうるさいっすわ」
「はぁ?!」

この飄々とした後輩にも随分と慣れてもうたなぁ。
相変わらずコケへんしあんまし笑うことも少ないんやけど、それでもやっぱり最初に会った時よりは、この学校を好きになってきてると思うねん。
たまに、ちょっとした時に笑うようになったんや。
部活に居るときだけなんやろか?勿体ないなぁ、財前、自分もうちょい素直に笑た方がえぇで?
なんてな。謙也が居るときだけやって知ってんで。



あぁ、朝練だけでめっちゃ濃いやんか。
そら授業がやたらサラサラ流れていくわけや。
謙也の放送もあっちゅー間に流れていくわけや。
至急多すぎやろ。至急来られても困る先生かて居るやろ。まぁそれがうちの放送の常っちゅーもんやけど。


「なんでや小春ぅ〜一緒に飯食うてもえぇやんかぁ〜」
「じゃかぁしい!付き纏うなや一氏おらぁ!」
「こはるぅう〜」

なんてあいつらが廊下を通り過ぎるんも珍しいことやない。
あぁほんま、ユウジお前は、残念やなぁ…。
謙也に言わせたら俺も大概残念系らしいけど、俺的にはやっぱお前がいっちゃん残念やわ。
知っとるか?バンダナ取ったユウジはめっちゃイケメンなんやで。
本人曰く、「あとは背ぇ伸びたら完璧や!小春より高なんねん!」らしいわ。
小春より〜のくだりが無かったら完璧やと俺は思うで。
まぁ、ユウジは今のまんまでえぇんとちゃうか。えぇサイズ感やで。








「やっと放課後やっちゅー話や!」

お前ん中で午前中って何時間の換算なんや?絶対俺らの半分くらいで回っとるやろ。
そんなお前がやっとって言うてたら俺らにとったら遂にって感じやで。

「白石ー!置いてくでー!」
「ちょっとくらい待たれへんのか謙也〜」
「待っとるやろ!せやからはよ来い言うてんねん」
「はいはいもうちょい待っときやー」

待つのが嫌いなお前を待たせんのは結構な優越感やなぁ。
2年と3年の教室が離れとってよかったわ。
口尖らせながら早く、と俺を急かす謙也なんて見られた日には俺の命が尽き果てる可能性がある。
ほんま嫉妬深い奴やで。でもそれに気づかん謙也があいつをそうしたに違いない。しゃーないやっちゃな。
行動早すぎて感情ついていかれへんのちゃうか?鈍感さんもそこまでいったら最早最速なんか?
あれや、早すぎてゆっくり見えるっちゅー……まぁ、ちゃうやろな。

そんな適当なくらいでえぇんとちゃうか、肩の力抜きや財前。









「ほな今日は各グループで弱点強化や!なるべくレギュラーはバラけて後輩に指導するように!」

あぁ今日も完璧な指示やろ?なんてな。当たり前っちゅー話や!って親友のツッコミが聞こえるわ。
せやなぁ、これが当たり前っちゅー話や。


「しぃらいしぃ〜ワイ試合やりたいぃ〜」
「あかん、今日のメニューさっき言うたやろ」
「せやかてワイ弱点なんかないで!」
「金ちゃんには無うてもある奴は仰山居んねん、部活なんや、皆で作っていかなあかん」
「う〜…」
「金ちゃんは皆で一等強くなりたくないんか?仲間とちゃうん?」
「仲間に決まっとるやんか!ワイ、ちゃんと皆好きやもん!健ちゃんのことやって副部長やったんは知らんかったけどめっちゃ好きやし!」
「せやろ?やったらちゃんと練習せな。あと金ちゃんは力加減っちゅーもんを覚えなあかんで」

あのゴンタクレも一本気で素直なやっちゃ。そんなところが憎めへん。
まぁ練習の度にこうやって諭す身にもなってほしいもんやけど。








「今日はこれくらいにしとこか。あとは自主練や、残る場合は俺に一言言うように、鍵当番なってもらうからなー」

って言うたら大概誰も残らへんかったりする。俺も自分で戸締まりする方が安心やから助かるんやけど。
まぁ、俺より残る奴もそうそう居らへんけどな。


「お〜白石、まだやっとったんかい」
「オサムちゃんは何やっとってん」
「や〜ちょっとなぁ」
「どうせ競馬かなんかやろ」

部活がとっくに終わってくるってどないな顧問やねん。
まぁ、いつもそういうわけちゃうけど。

「ま、そろそろ帰らなあかんでぇ〜」
「わかっとるー」
「ほなお疲れさん」


あぁ、今日も終わってもたなぁ。





朝来た道を、俺はまた同じくらいの速度で、いや、少し遅い速度で帰る。
皆で寄り道したりしながら帰る日もあるんやけどな。自主練あると大抵一人や。

夕方は少し肌寒さがあって、部活後の火照った体には丁度えぇ。
帰ったらシャワー浴びて、毒草の復習…いや、久々に電話でもしてみよか。



















『も、もしもしっ!』
「もしもし?切原クン?」
『はい!』
「なんや元気やなぁ」
『そっスか?へへ、白石さんから電話くんの久々だからかも』
「そない嬉しいこと言うてくれてもなんも出ぇへんで」
『電話に出てるっスよ!』
「んん〜絶妙やなぁ」
『何がっスか?』

今の、天然かいな。ほんま関東人はわからへんなぁ。
ま、切原クンは可愛ぇから天然ボケも許せるけどな。

『にしても珍しいっすね電話なんて』
「そ?なんとなく、切原クンの声、聞きたくなってん」
『お、俺も白石さんの声聞きたかったっス!』
「ほんま?嬉しいわぁ、明日休みやからちょお遅くなっても平気やし」
『マジすか!やりぃ!』

照れてみたりするくせに、素直に喜べたり。君はほんまに不思議やな。
金ちゃんとはまた違う素直さや、財前と同じ学年とは思われへんわ。

切原クンの話を聞くんはめっちゃ好きや。
切原クンは存外部活の先輩等が好きで、特に真田クンのことは苦手や言うてるわりによう話しとる。
幸村クンのことの方が余程苦手なんとちゃう?や、まぁ彼には苦手、とかやないかな。

『そんで丸井先輩ってば、』
「うん、」


こうやって君が、日々を語る相手が俺やって。そない嬉しいこと、ないやんか。
俺には触れられへん日常をちょっとでもかいまみれる。
君が嬉しいこと、楽しいこと、悔しかったこと。色々。
それに、

『俺、やっぱ白石さんのことすっげぇ好きっス!』

電話越しでも照れてんの、まるで目の前に居るみたいに伝わってくるその言葉が、ほんまにめっちゃ嬉しいねん。
いつもってわけちゃうけど、せやから余計に、嬉しいねん。

「俺も、赤也クンのことめっちゃ好っきゃで、今すぐ会いに行きたいくらいや」

なぁ、ほんま。今すぐ会って抱き締めたい、なんて気持ち今まで知らんかったわ。
臭いドラマみたいやけど、人間の感情ってベタなんちゃうかな?新喜劇のコケみたいなもんや。
特別やなくてえぇねん、それこそ日常で、ありふれたことで、そんなんで幸せなんや。


『あの、冬休み、』
「ん?」
『白石さん予定とかありますか?』
「や、別にないで」
『お、俺!冬休みそっち行くんで!』
「…へ?」
『もう決めました!部活も!許可もらったんで!!』

冬休み、まだ先やで?

『覚悟してください!』

って何をや。

「ほな期待しとこかな、赤也クンがどんなことしてくれるんか」
『絶対びっくりさせてやりますよ!』
「楽しみにしてるわ」



あぁ、いつの間に、23時ってもうそろそろ今日が終わってまうやんか。

「もう大分遅なってもうたな」
『へ?あ、そっすね』

そんなわかりやすくしょげた声出さんとってぇな。
俺かてまだまだ話しとりたいんやで?

「また電話するから」
『っはい!』
「ん、ほなおやすみ」
『おやすみなさい!』



あぁ、えぇ1日やったな。
いつも一緒や、なんて言いつつ、ほんまそんな毎日が幸せっちゅーこっちゃな。
友達、仲間、そして恋人、そういうんも全部日常にあるもんやん?
特別ってそんなほんまはただの毎日やったりするんやない?









それに気付いた今日の俺は一段と絶頂やろ?
んんーっ、絶頂!!


ほな、明日も1日がんばろか。



+++*


てゆー。白石の無駄がなさそうな1日を妄想してみた。

なんやかんやで光謙を気に掛けているんじゃないかと。





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