綺麗事はやめにしよう、だって僕は人間なのだから(幸真の白赤添え)


知っているかい?欲を持っている時点で、全知全能なんかにはなれないんだよ。
ましてや、神だなんて。


程遠い話さ。





















「やぁ、赤也」
「あ、幸村部長じゃないっスか!」
「ふふ、俺はもう部長ではないんだけどね?」
「んん〜でも、部長って呼び慣れてるから変えらんねーっスよ」

そう言った赤也はこの一年ほどで少し背が伸びたように思う。
もちろん、俺だってまだまだ伸び盛りだから目線は変わらないけれどね。

「どうしたんすか?こっち来んの珍しいっすね」
「そうかい?なんとなく、ね」

お前の様子が気になった、なんて、俺が言うわけないじゃないか。
柳あたりに言わせれば丸見えらしいけれど、赤也は鈍いから気が付かないだろうね。










「そういえば、白石とはどうなの?」
「え?!な、なんすか急に!!」
「白石、こっちの高校に通ってるんでしょ?たまには会いに来てくれてもいいじゃないか、ねぇ」
「ん〜…でも白石さんすげー忙しそうなんで。だから俺もあんまり連絡しないようにしてます」
「なんで?いいじゃない、疲れてたら余計に、可愛い子には甘えられたいもんだよ」
「な、なんすかそれ」
「疲れたときには甘いものって言うだろ?」

ねぇ赤也、俺が気兼ねなくお前に会いに来たのは、こうやって突然現れたところでお前の心を乱すことが無いってわかっているからなんだ。
むしろお前は少しほっとしてるだろう?いまだに俺を部長と呼ぶくらいだから、部長、と呼ばれるのにはまだ慣れていないんだろうね。

あぁ、話がズレてしまったね。
ほんとは白石に会いたいくせに、我儘なお前が我慢するなんてね。少しは辛抱強くなったじゃないか。
それにお前が連絡しないように白石は嘘を吐いたんじゃあないかな?お前が今に集中できるように、ね。
悔しいなぁ、そうやって赤也のことを考えてやるのは、俺達のすることだったのに。
今じゃ白石、君が独り占めしてるんだ。
別に恨んでいるわけじゃない。そうじゃない。

ただの醜い嫉妬。


おかしいね。俺は赤也にとってただの先輩で、元部長。それだけなのに。
恋人である君に嫉妬するだなんて。
おこがましいとは、わかっているんだけど。
赤也のことは可愛がってきたからね。



仮にも神の子だなんて持て囃されてきたけれど。
通り名のようなものだとしても、神だなんて名は相応しくないな。

「どうかしました?」
「あぁ別に、いや、ちょっとおかしくなっただけさ」
「なにがっスか?」
「赤也が部長ってことがね」
「な!なんすかそれ!失礼っスよ!」
「はは」
「も〜、幸村部長はなんも変わってないっすね!」
「そりゃ、簡単には変わらないよ、人間だからね」

そう、俺だって人間なんだ。だから贔屓だってするんだよ。

「ま、俺は好きっすけどね!部長のそゆとこ!」
「そうかい?それは嬉しいね」




でも知ってるんだ。それは俺の欲しい好きじゃないって。
けどまぁ、いいかな。この、無償の尽きることが無い好意でも。

そろそろ、諦めなければいけないな。





「それじゃあ部長!俺そろそろ行くっス!」
「あぁ、また」

こうやって同じ敷地内で日々生活しているだけで。いいじゃないか。
今度自慢してやろうかな。ふふ、さぞ楽しくなさそうな顔をするだろうね。
あと、赤也をよろしく、ってね。これには驚くだろうか?楽しみだな。





























「どうした幸村、何か悪巧みか?」
「言うようになったね真田」
「ふん」
「そろそろね、諦めようと思うんだ」
「む?」

気付いてたんだ。赤也への気持ちは。好きは。
違うって。

「俺らしくもない。逃げてたんだ」
「お前が?」
「そう、ずっとね」
「まぁ、いいのではないか?時には」
「真田がそんなこと言うの、珍しいじゃないか」
「理由もわからぬまま律するだけでは、いかんからな」
「…そうかい」
「あぁ」
「俺は、真田のそういうとこ、好きだよ」
「そうか」
「まぁ、そういうとこだけじゃなくて全部好きだけどね」
「な、何を急に、」
「言っただろう?諦めるって」
「…?」


どこかで、中途半端に気にしていたんだ。
平等になろうとしてた。でも、なれるわけが、なかった。
真田、君への想いと同じものを他の人間へも与えるなんて、できなかったんだ。

俺も、一人の人間だからね。

「真田、君のことが好きなんだ、誰よりも贔屓したいくらい」
「何をっ、」
「皆平等に好きになる、なんてもう諦めることにしたんだ」




底が見えない程の欲深さに溺れて、やっと人になれるよ。

「君だけが、好きだ」

















返事は聞かなくても、わかっているよ。
ふふ、仮にも神の子、だからね。

これからは人らしく、たまには神の名を拝借することにしようか。




+++*


何故か幸真エンド。
最初は白赤←幸を目指していたのですが。
やっぱり幸村にもハッピーエンドを!と。
ナチュラルに1学年上になりました。立海てどういう進学の仕組みなのかわかんないんですがとりあえずエスカレーターにしときました←
白石も関東の高校に進学した設定。





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