esにリビドー、君に溶かしてカタルシス

距離が、煩わしい。








「し、らいし、さ?」
「ん?あぁ、すまんな」

余裕が、なかった。
あまりに距離がありすぎて。
君の手を引いて、抱き締めて。
隙間なく、その体温を、感じたい。

高めの体温。鼓動が聞こえる。
あぁ。



「なぁ、切原クン」
「は、はい」
「好きや」




こんなありきたりな言葉を、伝えたくて堪らないなんて。
その一言だけで、君の体温が上がって。
自分自身の鼓動も、早くなって熱くなって。

レンアイ、というのは、熱くて苦しくて、けれど何より幸せで堪らない。
そんなものだと、君を好きになって思うようになった。


とてもじゃないけれど、恋だの愛だのを語ることはできない。
こんなにも好きで好きで会いたくて苦しくなる気持ちを、今までに感じたことがなくて。
その気持ちが、君を抱き締めただけでこんなにも軽くなることだって、ようやく知ったのだ。
“好き”だと言う以外にどうしようもなくて、けど好きだけじゃ足りない。
幸せなのにくるしい。甘いのに苦い。
矛盾してる。けど。





それが、君に恋をしているという証明かも、しれない。






「ぉ、れも…白石さんのこと、好き、っス」
「…っおおきに」

君も、同じように。表現しがたい感情に胸を埋め尽くされているのだろうか。
そんな感情から絞り出した言葉なのだとしたら。


















離したく、ない。
離れたく、ない。
距離も隙間も、全部、煩わしい。
















「赤也クン、」
「?」
「キスしよか」
「、はぃ」

君への確認と、自分へのアラーム。
ほんの一瞬の、これからすること、に、こんなにも緊張してる。
自分から言いだしたくせに、恥ずかしい、のだと、思う。けれど余裕ぶりたい。リードしたい。ちっぽけな自尊心。
君を捕まえた手は、こんなに震えているのに。今更すぎる。








考えているうちに柔らかくてあたたかくて、甘い、それは、終わってしまった。



「ぅ〜…」

低い位置にある顔が、俯いてしまって、表情を窺い知ることができない。
少し残念ではあるけれど、きっと俺も情けない顔をしてしまっているだろうから、今はこれでいいかもしれない。
覗き込んで、少し意地悪をするくらいに余裕が持ちたいけど。
そうできるようになってしまったら、きっともうこんな風には戻れないだろうから。
いつか、俺はこんな日の自分を、若すぎて恥ずかしいと思うに違いない。
どちらにしろ、胸の内がくすぐったいものなのだろう。

“幸せ”が溢れて心を揺らしてる。

「あー、なんや、…めっちゃ幸せや」

心に収まりきらず溢れだした言葉。
声で返事がない代わりに、君の腕の力が強くなったことが嬉しくて。






ああ、幸せすぎて。
どうにかなってしまいそう。

けれど、また遠くへ帰ってしまうのだと思うと。
それまで、一時も離していたくなくて。
そのまましばらく、俺たちの間に会話はなかった。
ただただ、お互いの体温を感じながら、時折早くなる心音を聞いた。

不安定さが、愛しくて心地よくて。


「おやすみ」

その一言だけを交わして、あたたかい眠りに溶け込んだ。
















あぁ、溶けたいくらい君が好きで。
けれど混ざれないから君を好きで。
君の体温だから、一緒になってしまいたいと思うことができて。
そんな全部を蕩かして、

君と同じ夢が見られればいいなと、思った。





+++*


白石が卒業して赤也が3年になる前の春休みくらいで。
デートしておうちでご飯食べてお風呂入って、ふとした時にもう好きでたまらんなって赤也をぎゅうぎゅう抱き締めちゃう白石とか可愛いと思います。
白石の腕の中で硬直してる赤也も可愛いと思います。

キスだけで夢が見られそうな白赤が好きです。





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