可愛い悪魔のお願い事

普段なら眠っている時間だったけれど、今日は特別な日だから。
誕生日を迎えた大好きなあの子に、自分は遠くから電波を飛ばすことしかできないが、それだけで十分だったし、今現時点ではこれが最大限だ。



〜♪


程なくして、携帯電話が着信を告げる。それは彼からの着信だけを知らせる音。

「…可愛ぇなぁ」

『ありがとうございます』と、律儀な返事。少しの改行の後に、『今から電話してもいいですか?』なんて。
きっと彼は今、自分からのメールの返事を待っているだろう。
待ってくれているのなら、わざわざその返事をメールで返す必要などない。



「もしもし?」
『もっ、もしもしっ』
「あ、ごめんなぁ、返事するよりかけた方がはやいやろ?」
『あ!そっすね!』
「せっかく話できるんやし改めて、誕生日おめでとうな」
『ぁ、ありがとうございま…』

ごにょごにょと消え去りそうな声で言うのが愛らしいな、なんて思う。

「あ、せや、切原クンなんか欲しいもんとかある?」
『へ?』
「誕生日プレゼント、本人に聞くのもどないやねんって感じやけど」
『あー…物、は別に』
「そうなん?」

正直、恋人として付き合っているとは言っても、なんとなく彼の好きなものを選んでやれるほど一緒に過ごした時間は長くなかった。
だからといって別にさみしいなんてことはないけれど、こんなことを聞くのはかっこ悪いとは思った。

『えと、なんでもいいんスか?』
「うんまぁ、俺でできる範囲内ならえぇで」
『そ、そうですか』
「で、なんかあるん?」

えっと、と小さく聞こえた後にしばしの無言。
言い淀むような難しいことなのだろうか?
ほんの少しの無茶であれば、あの頃よりは少し余裕のできた自分になら要求してくれたって構わないのに。

『…あの、』
「うん」
『ぇと、…な、名前で呼んでもらっていいですか…?』
「え?」
『いいぃい今だけ!今だけでいいんで!…い、いつもだとその、照れるからっ』



お金では買えない、というのは、こういうものなのだろう。
こみ上げるこの気持ちを、自分だけがもらってしまっていいものなのだろうかと、彼と居ると思ってしまう。
今だって、そうだ。


『白石さん?あの、』
「…赤也クン、」
『っ』
「赤也クンが生まれてきてくれてめっちゃ嬉しいわ、ほんま、出会えて幸せや、…誕生日おめでとうな、これからもよろしゅう」
『ぇ、あ、は、はいっ!』

心から君に、君の生まれたこの日に、感謝と祝福を。





+++*

短いけれど…誕生日だから今だけ名前で呼んでほしいっていう赤也が書きたく。
先輩たちに呼ばれるのとはやっぱり違ってなんかどうにも恥ずかしい、けど呼ばれたいっていう葛藤を何度も繰り返しているといいです。
赤也が精一杯望んでるものがピュアすぎてほんまにこれだけでえぇんやろかってちょっと思ったりする白石も居たりして。
想定外のピュアさに戸惑う白赤が愛しいです。なに。かわいいなおまえら…。

赤也が電話切った後に(うっわやっべーめっちゃドキドキした!)とかって布団の中でジタバタしてたらいいです。
中学生の名字呼びからの名前呼びへのステップはかなり大きい、はず。

そんでなんとなく高1白石で。←
進学しても遠距離してる白赤も可愛い。





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